第50回「シールドトンネル工法施工技術」講習会

シールド工法 それぞれへの挑戦

T字接合シールド工法(T-BOSS/S)による既設管との側面地中接合

最近の都市部におけるシールドトンネルでは、道路下埋設物の輻輳化や地上用地の確保が困難であること、トンネルの大深度化に伴う建設費用の増加などの問題から、立坑設置を必要としないトンネルの接合技術が求められている。
東京都下水道局発注の飛鳥山幹線その5工事において、T字接合シールド工法(T-BOSS工法)S方式により、すでに供用されている既設飛鳥山幹線(仕上がり内径φ3500)を、泥水シールド機(外径φ2890)で直接切削して、無事に新設管との地中接合を果たした。
本稿では、T-BOSS工法として初めて採用された S方式(切削リング一重構造)の開発から実施工までを報告する。

五洋建設(株) 東京支店 土木部 課長  網野 巌
注)T-BOSS工法には、本報文のS方式と他にW方式(切削リング二重構造)がある。

玉石混じり砂礫層に対応する気泡シールド
雨水幹線(二次覆工省略型)での内面平滑型セグメントの採用

シールド技術の進歩は目覚ましいものがあるが、玉石混じりの砂礫層でのシールドの施工はいまだ難度が高い掘削管理が要求されている。今回、厳しい施工条件を克服するために気泡シールドを採用することで、礫を破砕して掘進するのではなく、礫を取り込んで掘削を行うための掘進管理に挑戦した施工実績と今後の展開について述べるものである。
また、雨水幹線の二次覆工省略型(従来セグメント使用)の設計に対し、内面平滑型のセグメントを提案し、採用した結果も報告する。

(株)熊谷組 東北支店 土木部 部長  黒川 幸治
(株)熊谷組 東北支店 長町第2雨水幹線作業所 所長  伊藤 光夫
(株)熊谷組 東北支店 長町第2雨水幹線作業所 副所長  田中 敬二

コンパクトシールド工法の開発と施工事例

都市部では、管渠の老朽化や汚水量・雨水量の増大に伴い、下水道再構築事業が本格化している。その中核である主要枝線の新設工事では、小口径のシールド工法を採用することが多いが、このような工事は、「コスト低減」「工期短縮」「施工環境の多様化への対応」「環境負荷の低減」「維持管理の効率化」といった課題を有している。コンパクトシールド工法は、これらの課題を克服した新しいシールド工法であり、以下の技術的特徴を持つ。

(1) 4分割3ヒンジ構造の溝付き二次覆工一体型セグメント
(2) 後方設備内包型3分割シールド
(3) ガイドローラ付きタイヤ式無操舵搬送システム

本稿では、コンパクトシールド工法の開発経緯から要素実験の概要、および現場適用事例とその実績について述べる。

東京都下水道局北部建設事務所 工事第二課長    松井 邦恭
(株)大林組 土木技術本部 技術第二部 シールド開発グループ長(技術士〈建設部門〉) 守屋 洋一
(株)大林組 東京本社 大島JV工事事務所 所長  中村 鉄也

東京湾海底下
世界最長9,030m超長距離シールドにおける高速施工

近年のシールド工事を計画する上でのキーワードとして、長距離掘進並びに高速施工が一番に挙げられ、年々ニーズが高まっている。
本報告は、1台のシールド機としては世界最長9,030mの距離を、カッタビットの無交換並びに本掘進での計画月進量540m/月という高速施工を確保した計画並びに現地検証事例を述べるとともに、東京湾海底下の0.6MPaの高水圧での機械式地中接合について報告する。

大成建設(株) 横浜支店 東電東京湾シールドJV作業所 所長  日比谷 穣
大成建設(株) 横浜支店 東電東京湾シールドJV作業所 課長  秋山 秀夫

道路分合流部における大断面・併設シールドの切開き施工

中央環状新宿線ではシールド工法を主体としているが、出入口、連結路など分合流部を築造するため、併設したシールドトンネルの切開き工事を実施している。このうち、今回、開削工法および非開削工法による代表的な2例について報告する。
一つは、西新宿南連結路と新宿南出入口のダブルデッキかつ縦断方向に連続的に断面が変化する構造をした区間であり、延長約190mにわたり上部から開削工法により切開く工事である。
もう一つは、西新宿北連結路の分合流部で、大型交差点下に位置し重要埋設管路があることから、延長約100mにわたり上部にパイプルーフを設け、隣接した立坑から地中で切開きを行う非開削工事である。
ここでは設計・施工法およびVE提案などについて報告する。また、将来の道路分合流部の施工法に対して、その発展性について述べる。

首都高速道路(株) 東京建設局 設計第一グループ 総括マネージャー  土橋 浩
(株)間組 土木事業本部 技術第一部 課長  名倉 浩
(株)間組 関東土木支店 西新宿作業所  宮脇 卓哉
(株)間組 関東土木支店 代々木作業所  三木 章生

さらなるニーズに応える技術『ラムサスSDシールド工法』
-ラムサス掘進機を利用した小口径シールド工法(φ900~)-

推進工法を基本として開発されたラムサス工法でしたが、昨今では、巨礫・玉石層や岩盤層において1kmを超えるような工事が多くなってきており、推進工法ではとても困難な条件になってきています。
そこで、ラムサス工法協会では、それらの社会ニーズに応えていけるように“小口径シールド工法「ラムサスSDシールド工法」”(仕上がり内径φ900~二次覆工省略型)を開発しました。
愛知県内において施工実績を作り、そこからさらに施工性を向上させ、RCセグメントを基本としスチールセグメントにも対応可能な工法になりました。
超急曲線(R=10m)、機内からのビット交換も対応可能となっております。
RCセグメントは5分割で特殊継手を採用し、分割数の多い分の作業効率をカバーしています。

サン・シールド(株)技術部長(ラムサス工法事務局)  浅岡 浩二
サン・シールド(株)技術課長(ラムサス工法事務局)  齋藤 俊二