第56回「シールド・トンネル工法施工技術」講習会

“困難な施工環境下を”
掘り進むシールド技術

※本講習会は、土木学会「継続教育(CPD)プログラム」認定(CPD単位6.8)にて、2012年4月に開催されました。

狭隘な施工空間における道路トンネル分合流部の設計と施工
-首都高速中央環状品川線大橋連結路工事の例-

本工事は、首都高速道路3号渋谷線と中央環状線を接続する大橋ジャンクションの一部で、品川線本線トンネルから分岐する連結路トンネルである。密集した市街地にある幹線道路上にシールドの発進立坑等を開削工法で設けた後、シールド工法により上下2本の連結路トンネルを築造し、別途工事で施工される並走する本線シールドトンネルとの間を地中で切開いて分合流部を構築する。
ここでは、“狭隘な施工空間への対応”をキーワードとして、狭小作業帯での大深度土留め壁施工による立坑等の構築や,2本の連結路シールドトンネルの施工とシールド駆動部等の一部引抜き・再利用工法,拡幅部の覆工構造として鋼製セグメントを採用した非開削切開き工法、セグメント圧入とリバース掘削による深さ50mの地上避難出口立坑の築造等について、設計・施工上の創意工夫を紹介する。

(株)間 組 関東土木支店 土木部 中央環状品川線大橋出張所 設計課長  井上 隆広

気泡シールド工法の適用拡大へ
-消泡剤開発による掘削土流体輸送と粗石層へのゲル化気泡 -

近年、気泡シールド工法は切羽の安定、付着防止、経済性等の優位性から長距離・大断面シールド工事を中心に増加傾向にある。今回、環境にやさしく消泡作用が強いシリコーン系消泡剤(FT-01)を開発し、気泡シールド工事で掘削土の流体輸送を実現した。
本稿ではFT-01の消泡効果によって、流体輸送ポンプ類の性能低下(キャビテーション)や泡の排水による環境保全の課題を克服し、粘性土層(520m)から砂礫層(638m)、砂層(266m)まで、安全・高環境・日進量向上のシールド掘進状況と粗石混じり砂礫層へのゲル化気泡(Cタイプ)の適用について報告する。

(株)フジタ 四国支店土木部 北部幹線作業所 所長  宮本敬治郎
(株)フジタ 建設本部 主席コンサルタント 技術士  大井 隆資

高水圧下における泥土圧シールドの急勾配施工と硬質粘性土の土砂圧送

本工事は国道302号および高速道路名古屋第二環状線の路線下に、仕上がり内径5450mmの共同溝を泥土圧シールド工法により築造する。被圧水0.3Mpa(約GL-40m)下において最大上り勾配11.034%を上下中折れシールドで掘進し、道路橋脚基礎杭、JR東海道線、東海道新幹線などの重要構造物下を通過するため止水性の向上と高い掘進精度が求められた。急勾配区間に対応するため、坑内のズリ搬送は土砂圧送ポンプ方式を採用した。本稿では、高水圧、急勾配施工におけるシールド掘進管理と土丹層と砂礫層の互層における土砂圧送管理の実績について報告する。

飛島建設(株)名古屋支店 緑地共同溝作業所 技術士(建設部門) 所長  天野 裕史
飛島建設(株)名古屋支店 緑地共同溝作業所 副所長  山本 孝男

“沈下ゼロ「0」を目指して”TACの取り組み
先端混合型同時注入管およびクレーショックの活用事例

1976年に「エア系2液裏込め注入工法」を開発・販売を開始以来、(株)タックでは、裏込め注入や加泥注入・その他シールド工事に係る様々な材料・システム・機器を開発・販売してきました。
"シールド工事による沈下ゼロを目指して"、切羽には適切な添加材、シールド機通過時にはクレーショック、テールボイドには2液型注入材に最適化した同時注入システムと、常に革新的な技術を提案し続けてまいりました。
本報告は、「詰まりにくい先端混合型同時注入管システム」と「固まらない注入材・クレーショック」という特殊な概念の注入材の活用事例を紹介します。

(株)タック 常務取締役  加納 洋一

φ2130泥土圧シールド・土砂圧送で11カ所の15R急曲線を施工

本工事は、九州の玄関口博多駅前における掘削外径φ2130mm、路線延長L=1363mのシールドトンネル工事である。路線の線形はR15mの急曲線を11箇所有しており、直上の幹線道路は、交通量が多く地下埋設物が多く存在する。
当該径の泥土圧シールドでは、坑内土砂搬送にズリ鋼車とバッテリー機関車の組合せが標準であるが、急曲線が多い本工事では、ズリ鋼車の通過スペースの確保および安全性確保等に対する課題がある。さらに施工延長が1kmを越えた後、セグメント搬送時間とズリ鋼車による掘削土砂搬送時間により施工サイクルの低下が生じることになる。
これらの課題に対して、本工事では,ポンプ圧送方式による坑内土砂運搬を採用した。本稿では、土砂圧送により急曲線施工を行った泥土圧シールド工事について報告する。

西松建設(株)九州支社 比恵シールド出張所 所長  佐藤 政信
西松建設(株)九州支社 比恵シールド出張所 副所長  久米 満里
西松建設(株) 本社 土木設計部 課長代理(技術士) 村上 初央

今までに例のない地上発進・地上到達が可能なシールド工法
- URUP工法 -

「中央環状品川線大井地区トンネル工事」は、首都高速道路中央環状品川線のうち、高速湾岸線から分岐する高架橋構造の大井ジャクションとトンネル構造の本線とを接続する工事である
今回、地上からトンネルへのアプローチ区間に、掘削土量の縮減を目的の一つとして、国内で初めて地上発進・地上到達が可能なシールド工法「URUP工法」を適用した。
本稿では、本工事で実施した地上発進・地上到達における種々の施工技術を紹介するとともに、重要構造物との近接施工や高水圧下の換気所立坑におけるシールド到達・Uターン方法などを紹介する。

(株)大林組 土木本部 生産技術本部 シールド技術部 課長  山元 寛哲