第59回「シールド・トンネル工法施工技術講習会」

“シールド高度化施工への展開”
— 新たな技術対応に向けて —

※本講習会は、土木学会「継続教育(CPD)プログラム」認定(CPD単位6.8)にて、2015年4月開催されました。

軟弱地盤におけるコンパクトシールドの急曲線施工

本工事は、浸水被害対策のため、汚水および雨水を収容する管渠(仕上がりφ1,800mm)を新設するものである。施工延長945.85mの雨水管渠をコンパクトシールド工法(泥土圧シールド工法)にて築造した。
コンパクトシールド工法の特徴として、4分割構造で3つのナックル継手(残り1つは嵌合継手)を持つ溝付インバート二次覆工一体型セグメントがあげられる。
N値0~2の高含水で軟弱なシルト層において、機長L=10.1m、2段中折れ機構を持つコンパクトシールド機により、4箇所の急曲線(最小半径R=15m)を施工した。本稿では、その施工結果について報告する。

西松建設(株) 関東土木支社 大島シールド出張所 副所長 北本 正弘

“ジャッキ圧制御による”
シールド自動方向制御システム「FLEX」の開発と現況

ジャッキ圧制御を基本とするシールド自動方向制御システム「FLEX」は、開発から4半世紀が経過し、平成26年10月現在、適用件数48件、延べ施工距離60kmとなった。この間、急曲線、大断面等の厳しい工事に適用しながら改良を重ね、現在はすべてのシールド工事に問題なく適用可能である。近年では掘進とセグメント組立を同時に行う「ロスゼロ工法」の中枢技術として大口径長距離シールドの工期短縮に貢献している。
本稿では、開発過程と最新システムの概要を述べるとともに、R=15m急曲線の施工例について紹介する。

飛島建設(株)土木事業統括部 機電G 課長 技術士(建設部門) 西 明良

土圧加水式シールド工法による地下河川トンネルの施工

本工事は、北海道北見市を流れる小石川の氾濫被害を低減するための河川改修工事の一環として、全長4.8kmのうち、丘陵部の約500mをシールド工法(シールド外径φ6840)により地下河川トンネルとして築造するものである。小石川を管理する北海道網走建設管理部で初の総合評価方式による工事であり、トンネルの品質確保等を目的としたセグメントの幅広化、分割数の低減、インバート付きセグメントの採用といった提案が評価され実施に至った。
本稿では、建設汚泥の処分費用を低減できる土圧加水式シールド工法や技術提案にて実施したインバート付きセグメントの概要および施工結果について報告する。

(株)大林組 東京本店 外環北行シールドJV工事事務所 工事長 森 理人

初の大深度法適用によるシールド施工と
シールド機内からのビット交換

本工事は、現在計画されている大容量送水管(芦屋市境~奥平野浄水場区間の約12.8km)のうち、その最西端、奥平野浄水場から布引立坑までの約2.4km区間の送水トンネルを築造するものである。当工事では、全国で初めて大深度地下使用法が適用された。トンネル掘削には泥土圧シールド工法を採用したが、大深度(57.1m)、長距離掘進といった条件に加え、掘削対象土層も複雑な土質構成となっており、到達までに途中3回のビット交換を行った。
本報文では、初の大深度法適用によるシールド施工とシールド機内からのビット交換について報告する。

(株)安藤・間 大阪支店 奥平野シールド作業所 所長 荒東 伸一

海外シールド工事の安全・安心で確実な施工計画の作成

シールド工法は英国で始まり、旧ソビエト連邦で回転式カッター掘削が実用化された。アメリカ合衆国では高速施工に重点を置いたシールドが発達した。日本では名古屋覚王山トンネルでシールド工法が採用されたのを契機に地下鉄工事での採用が進んだ。日本で爆発的にシールド工法が用いられたのは、河川環境改善を目的とした流域下水道整備で有るが、手掘りシールドが主体であった。
手掘りシールド掘削では地盤変化に対応して、地盤改良が多用された。その結果、地盤改良に伴う地下水汚染などの弊害が生じ、これをきっかけに密閉型シールド採用へ大きく転換した。
近年は、都市のステータスとして、中近東、東南アジアや中国で都市鉄道の整備に伴いシールド工法の採用が生まれている。ここでは、私が関係した海外のシールド工事に伴う施工計画事例を基に、安全・安心で確実なシールド工事施工計画作成に関して述べる。

(株)STD 代表 園田 徹士
( 元 (株)間組 土木本部 都市土木統括部長)

長距離・無水砂礫層におけるシールド掘進

本工事は、第二朝霞東村山線(第二原水連絡管)整備事業の一環である第5工区の水道管を入れるためのシールドトンネルを築造する工事である。施工延長はL=2760.5m、シールド機外径3080mmの泥水式シールド工法(MSD地中接合)が採用された。
掘進対象土層は、ほぼ全線にわたり砂礫層掘進であり、想定される最大玉石径は280mmである。事前調査からも地下水位はトンネル断面以下の区間が大部分を占め、泥水式シールド工法施工が極めて困難であることが予想された。また、発進基地周辺には民家が密集し、かつ、基地面積が800m2程度しかないため、発進基地仮設計画においても様々な対策が要求された。
本稿では、各種シールド仮設計画および無水砂礫層掘進対策と掘進結果について報告する。

戸田建設(株)東京支店 土木工事部 工事課 作業所長 技術士(建設部門・総合技術監理部門) 堀 昭