第27回「最新の推進工法施工技術」講習会

推進工事の難条件下を克服した
新技術とその施工実績

長距離・急曲線施工に特化した「コスミック工法」の概要と施工事例

ライフライン構築のコスト縮減に伴い長距離・急曲線推進の需要が増加している。現状では、これらの施工は多くの経験にうらうちされた高度な技術が必要であるとともに、細やかな管理に伴う多くの労務や高価な特殊管材が必要となり高額な施工費が必要となる。
「コスミック工法」は長距離・急曲線推進を経済的にかつ確実に施工するもので泥水式と泥濃式の推進工法である。現場条件に応じて要素技術を組み合わせることで課題を解決した。本稿では「コスミック工法」の概要と施工事例を紹介する。

奥村組土木興業(株) 技術部技術開発課 課長  作原 陽一

管径をオーバーする巨礫層への挑戦
“ラムサス工法とその施工実績”

巨礫・玉石層における推進工事は、今まで幾度となくされてきたが管径を超えるような巨礫層での施工実績は少ないものです。それは、巨礫層における施工では、ビット摩耗や推力の問題、カッターモーターの能力の問題など様々な原因が重なることにより施工不可能と判断されてきたためです。そこで、礫・玉石層を重点に開発されてきたラムサス工法では、それらの様々な問題を解決することにより難条件を克服し巨礫層での推進工事を成功させました。本稿では、その施工事例としてφ1000掘進機 L=280.356m 礫率77% 礫径φ1200mm、φ1000掘進機 L=720m 礫率80%強、などを紹介していきます。

ラムサス工法協会 事務局  浅岡 浩二
(サン・シールド(株)エンジニアリング部)

小口径から大口径まで長距離推進を可能にした
長距離推進工法「GIMSYS」2液滑材被膜形成システム

近年、立坑築造場所の確保が困難となり、コスト縮減への動きと相まって長距離推進に対するニーズが高くなっている。
そのような背景の中、当社は丸十工業(株)と共同で、粘性土層はもとより崩壊性の高い滞水砂層や礫地盤においても高い周面摩擦低減効果の得られる、長距離推進工法「GIMSYS」(ジムシス)2液滑材被膜形成システムを開発・実用化し、延べ推進施工延長は10,000mを超えるに至っている。
本稿では「GIMSYS」の概要と、山形県流域下水道工事(φ1100mm L=820m)・新潟市雨水幹線工事(φ2800mm L=430m)等の施工事例について述べるものである。

(株)加賀田組 土木本部技術部 課長  鶴巻 達也
(株)加賀田組 土木本部技術部 主査  笹川 七雄

大深度斜坑を泥水式推進工法で施工
地上から、地下87mへ縦に掘る

近年、推進工事における施工技術は急速に発展し、延長1.0kmの超長距離推進や曲線半径10m以下の急曲線施工実績も報告されている。
今回報告する泥水式推進工事は、急勾配というよりも立坑と言った方がふさわしいほどの他に例のない特殊な斜坑推進工事である。工事は国道1号線の地下 87mの深さに建設されて既に供用されている地下調節池(内径10.8mシールドトンネル)の天端に向け、国道に沿った公園敷地内(地表面)から伏角 75.6°の角度で呼び径2.0mの泥水式推進工事を実施し、調節池の換気孔とする工事である。本稿では、斜坑推進工法の設備概要と施工実績について述べる。

清水建設(株) 土木横浜支店 土木部 現場代理人  飯泉 勝
清水建設(株) 土木横浜支店 土木部 機電主任  赤上 仁平
清水建設(株) 土木事業本部 技術第四部 課長  久原 高志

ザ・超急曲線推進工法

急曲線推進において信頼を得ている、ベルスタモール工法(VM)とヒューム管推進工法(HP)が、他工法とどう違うのかを設計手法・施工方法等について実例に基づき説明する。
(1)工法の命運をかけた長距離急曲線推進 φ1500 L=400m R=18m 18m(HP)
(2)管がついてこない!! 急遽爪ジャッキ12段投入 φ1350 R=16m(VM)
(3)こんな工事も普通になりました。 φ800 R=10m IA=100度(VM)
(4)寸分の誤差も許されない!! φ1500で既設4号人孔到達(HP)

進和技術開発(株) 積算部・開発部長  井上 雅文

推進技術の新しい展開

今回の発表内容については、推進工事の現状と展開として

(1)特殊線形急曲線推進工事
(2)長距離推進工事
(3)玉石、転石、岩盤等の特殊地山対応破砕型推進工事
(4)到達立坑のない地山の中で発進側に回収する事が可能な発進基地回収型推進工事、また、その機構を利用し、山岳NATM工法の対策工に応用したリターン回収型長距離先受け工事、地下空間の構築のための地下覆工、山留工の密閉型推進工法としての矩形ボックス推進工事等を掲げる。
推進技術の延長線上にあるこれらの技術展開が、今後の推進工事としての市場性を拡大させる事を期して、ここに報告する

(株)アルファシビルエンジニアリング 取締役開発本部長  酒井 栄治
九州大学工学研究院 地球資源システム工学専攻 助教授(工博) 島田 英樹