第43回「最新の推進工法施工技術講習会」

推進技術 “厳しさへの対応”
設計と施工上のポイント

※本講習会は、土木学会「継続教育(CPD)プログラム」認定(CPD単位6.8)にて、2018年11月に開催されました。

多曲線・既設構造物到達・大深度・障害物施工の現実
~ツーウェイ推進工法が挑む厳しさへの対応~

 推進工法で解決を求められる技術的課題は高難度化への一途をたどっている。都市の複雑さはそのまま施工条件の複雑さとなって現れ、それはまさに厳しさが具現化されることであり、曖昧さを許容することができない現実との戦いになる。
 狭い曲がりくねった道路下を推進するための多曲線・急曲線施工、到達立坑を設置できない既設構造物への直接到達、既設幹線の大深度化に伴う主要枝線の大深度施工、線形では回避できない地中障害物対策……直面している課題は多岐に渡り、多面性をもった施工条件は画一的なアプローチでは解決へ導けない状況となっている。
 本稿では、技術的課題に対して何をポイントとしてどのような計画を行ったか、また実際の現場でどのようにその条件に対峙し、施工を行ったかを詳しく紹介する。

ツーウェイ推進工法協会  竹内 貴亮

掘進機から地中支障物の前方探査、超高圧地盤改良、切断除去が可能なDO-Jet工法

 都市化が進む中、道路下には上水道、下水道、ガス、電気管路、通信管路などの埋設物が輻輳し、これらを建設した時に使用された仮設材料(鋼矢板・H形鋼・地中連続壁等)が残置されているケースが多い。一方で、上水道,下水道などの新設工事や再構築工事では、環境問題や交通規制の問題などから非開削工法(シールド工法・推進工法)が採用されるケースが増えている。しかし、非開削工法では、上記理由により残置された仮設物を地上から撤去することが困難なことが多く、工事を遂行する上で支障となっている。このような問題に対応するため、推進工法やシールド工法の掘進機に超高圧ジェットシステムを搭載し、支障物の種類や位置、形状、範囲などを把握できる「前方探査」、周辺地盤の安定や既設構造物防護のための地盤補強などを図る「超高圧地盤改良」、鋼材を含めた支障物の「切断・除去」が可能なDO-Jet工法が開発され、着実に実績を上げている。ここでは、DO-Jet工法の施工実績ならびに今後の課題等について報告する。

東京都下水道サービス(株) 技術部 土木技術開発担当課長代理  稲田  聡
DO-Jet工法研究会 事務局長  大日方 英之

従来工法の技術的特性を活かした複合式推進工法(ハイブリッドモール工法)

 ハイブリッドモール工法は、大中口径管推進工法の一般的な推進工法である泥水式、泥濃式、土圧式が有する各々の技術的特性を活かし、推進区間内の土質変化に応じて掘進機内で最適な掘削・排土方式に切り替えることが可能な工法で、掘進機の切羽の安定性向上と掘削土の分級・循環装置(泥水処理設備)の開発による建設汚泥の大幅な減量化および推進中の掘削添加材のリサイクル化を実現した画期的な複合式推進工法である。
 今回、本工法の基本技術である切羽の安定と排土処理とを切替可能とした掘進機の概要説明と特長ある事例紹介を行う。

ハイブリッドモール工法協会 技術委員  伊藤  啓

推進工法におけるトラブルの根幹を探る

 昨今の推進工事の受注協議においては、経済性についての協議が中心となり、掘進機が必要とする①掘削能力、②最外周周速と回転数、③混合攪拌能力、④カッタ構造、⑤ビット形状や配置、⑥機内システム、⑦機内安全設備、⑧地盤への適用性等についての確認および協議が疎かになっている。すなわち、前提となるべき該当施工条件にその掘進機が対応可能であるかどうかの協議を行わず、施工に臨むために発生するトラブルも少なからず存在すると考えている。
 トラブル回避の大前提として、現場が求める条件に対して、掘進機の構造や能力や工法システム的な付加機能を有し、かつ人為的な対応能力、施工者の技量ならびに現場に対する集中力を持った管理を行うことが重要となる。
 そこで本稿では、トラブルの根幹を探るために、設計段階で配慮すべきリスクと専門業者が採るべき事前の対応策やリスク回避策について述べ、過去のトラブル事例を挙げながら検証結果をまとめるとともに、さらなるリスク対策について紹介する。

(株)アルファシビルエンジニアリング 施工本部副本部長 技術士  松元 文彦
(株)アルファシビルエンジニアリング 施工本部技術部長 工博  森田  智

設計時における推進管の選定方法について
~難易度の高い推進工事に必要な推進管~

 最近の推進工事では、道路幅員の狭い場所での超急曲線や、急曲線を含む多曲線施工、既設幹線のシールドなどへ接続する、大土被り下の工事など、推進技術の向上により、施工条件には非常に高い難易度の要求が増えてきている。
 難易度が厳しい条件が増えれば、そこに使用する推進管にも当然、高い性能が必要となるが、そういった条件を全て満足する推進管を選定するには、検討する項目も増えるため、より設計作業を煩雑にしてしまう可能性が高い。
 今回は、設計時における推進管の選定作業を整理し、推進時に作用する荷重と、埋設時に作用する荷重から、両方の条件を満足し、経済性も考慮した選定方法について説明する。

栗本コンクリート工業(株) 営業部 副部長  平尾 慎也

設計のポイントについて

 推進技術は、上下水道・農業用水路・電力・ガス・通信等のライフラインの分野において、目覚しい発展を続けている。長距離・急曲線・難地盤(巨礫・岩盤・複合地盤等)・低土被り・高水圧・施工環境(車上プラント・立坑内プラント・小立坑発進・既設構造物への直接到達・近接施工等)といった広い適用性が背景にある。しかし、これらの適用性のみで判断し、施工難易度を把握せず、設計を行うことは、非常に危険である。
 そこで今回は、設計者(コンサルタント)の協力を得て、アンケート調査およびヒアリングを実施した。
 その結果を踏まえ、設計で必要となる基準・設計での問題点・一般工法で施工が困難な場合の工法選定等、適切な設計について考察し、提案するものである。

ECO SPEED SHIELD 工法協会 技術・積算統括主任  檜皮 安弘

巨礫・岩盤層での長距離推進を可能としたラムサス工法
~さらなる進化で生まれたSmart犀工法~

 ラムサス工法は、小口径~中大口径まで幅広い施工が可能である。長年培ったノウハウを活かして日々進化させており、特に礫や岩盤などの難土質を得意としている。
 従来、当工法では、中口径推進で『市街地特有の小型立坑発進』や『既設管渠への到達』などの条件下での施工が困難であった。
 それらの条件を克服しつつ、従来の能力を生かし開発を進めた新工法《Smart犀工法》の紹介と施工事例、さらに、ラムサス工法の特徴ある施工事例を紹介するとともに、設計時での問題点や課題、施工上の留意ポイントを説明する。

ラムサス工法協会 技術課長  森  勇二
ラムサス工法協会 技術課長  曽根 友直