下水道管路施設の改築・修繕最新技術

下水道管路施設改築・修繕のコンサルティング・サービス

 昭和38年(1963年)にはじまった下水道整備五(七)箇年計画は、目標年次である平成14年(2002年)に第8次七箇年計画で一応の到達点に達した。この35年間に71兆9,316億円(実施額ベース)が投下され、下水道管路施設とりわけ敷設管きょ延長は、平成15年度末で34万5,000kmに達する膨大な量のストックを抱えることとなった。
標準法定耐用年数50年を超える経年管は、2010年には2万kmになるという試算がある。ここでは下水道管路施設の改築・修繕に関する最新技術を広範な角度から俯瞰した講座を用意した。下水道管路施設の改築・修繕技術は、これまでの設計・施工・維持管理の技術の集大成でもある。多様なこの分野の技術を網羅的に紹介する。

日本上下水道設計(株)営業本部課長(技術士) 網谷 力

今、管路防食の考え方は?

 下水道コンクリートの腐食は、バクテリアが生化学的に関与する複雑な過程を経て進行し、硫化水素の形態を経て、最終的に生成される硫酸はコンクリートを急速に崩壊させる。その対策として、硫化水素や硫酸を生成させないなどの事前の対策も考えられているが、コンクリート防食はその最後の対策技術と言われている。ここでは、まず、下水道施設の腐食のメカニズムを概説し、管路施設において、腐食に対して特に注意を要する箇所、ならびにその対策の基本的な考え方を概説する。さらに、コンクリート防食の位置付けと、腐食環境のグレーディングから防食設計に至る過程ならびに防食技術の現状を、日本下水道事業団の指針を絡めて説明する。

下水道防食協会 技術部長  宇野 祐一[ショーボンド建設(株) 工事技術部 部長(工博)]

管渠リニューアル箇所の絞り込み手法と
不明水ソリューション

 斬新な管渠リニューアル技術とともに求められているのが、効率的に改善箇所を絞り込む技術である。管渠リニューアルの目的は、老朽化・能力不足・物理的損傷・不明水などへの対策だが、とくに不明水対策は難しく、スパン単位の施工がいかに優れていても、合理的に改善箇所を絞り込まなければ当初期待した事業効果を挙げられないことも多い。
本稿ではまず新旧の、管渠リニューアル箇所の絞り込み手法を解説したあと、とくに絞り込みが難しい不明水対策に関する従来の問題点を明らかにして、最新の対応技術として、調査から検査、改善、評価、管理にいたる不明水のトータルソリューションについてご紹介する。

ペンタフ(株)代表取締役  後藤 清

硬質塩化ビニル管を用いた管路のリニューアル技術
「SPR工法」/「オメガライナー工法」

 現在、下水道・農業用水管など様々な管路が老朽化してきている。都市部等では交通・騒音等の周辺住民への影響により、開削が困難である。そこで非開削かつ管路材料として実績のある塩ビ管を用いた2つの更生技術について紹介する。
「SPR工法」 埋設管路の内部に硬質塩ビの帯状体を螺旋状に巻回し、既設管路との間隙に特殊裏込材を注入し硬化させ、既設管と一体化の強固な複合管を構築する。流水中でも施工可能で大断面・非円形管なども可能。
「オメガライナー工法」 管路内に断面を折り畳んだ硬質塩ビ管を引き込み、蒸気過熱で形状記憶性能により円形に復元させて新しい塩ビ管を管路内構築する。小口径管に適用でき、スピーディーかつ安全・確実な施工が可能。

日本SPR工法協会 技術担当課長  渡辺 充彦

中・大口径下水道管渠の更生工法
「バックス工法」ー鞘管工法ー

 平成15年度、下水道普及率は65%を超え、下水道事業は新設から維持管理・リニューアルの時代へ移行しつつある。特に大都市部においては、老朽化やコンクリート構造物の硫酸劣化現象等により修繕・改築を必要とする施設の急増が予測されている。本稿では、今後、修繕・改築市場の拡大が予測されている中・大口径管渠を対象とした管更生工法として、2004年3月に(財)下水道新技術推進機構より建設技術審査証明(下水道技術)を取得した鞘管工法の自立管方式に分類される管更生工法「バックス工法」について、その技術内容や今後の展開等について説明するものである。

バックス工法研究会  金井 孝之[鹿島建設(株)土木管理本部 土木技術部課長代理]

エコセラッミク管入替え工法

 地中に埋設され、劣化した下水道管を非掘削で既設管と同位置に、かつ既設管と同径のセラミック管に入替える工法である。立坑あるいは1号マンホールから既設管内に設置した先導体を牽引、拡径して既設管を破砕し、立坑から新設のセラミック管を順次挿入していく。エコセラミック管入替え工法は、既設管内径が200mmから、600mmまで施工可能なEC-Jスーパー工法と、φ200mmとφ250mm管を、1号マンホールから施工可能なEC-Jミニ工法がある。
本稿では、本工法の開発の経緯とともに、計画および施工のポイントについて報告する。

エコセラミック管入替え工法研究会 技術部会長  平井 正哉
[大林道路(株)エンジニアリング部部長(工博・技術士)]

下水道管きょの新しい更生技術
3Sセグメント工法

 近年、下水道をはじめとしたライフラインのストックは急速に増大している。一方、それらの管きょは、不等沈下・段差・継手箇所の離脱等の原因による機能低下やコンクリートの化学腐食による耐荷能力の低下等の問題も生じている。
3Sセグメント工法は、これらの管きょと更生材が一体となった複合管を構築する工法で、更生材である透明で軽量なプラスチック製セグメントを人力で既設人孔入口から管内へ搬入して、ボルト・ナットで組立ることができる。下水供用下での施工が可能な他、多くの特徴を有している。本報告では、3Sセグメント工法の概要・特徴、適用範囲、使用材料、施工手順等を紹介する。

西松建設(株)技術研究所 技術研究部部長(技術士)  渡辺 徹
前田建設工業(株)土木本部 土木技術部 建設環境グループ課長  伊藤 浩一

非開削で管を入替える改築推進工法「アイエムリバース工法」
下水道仮排水工法「RPS工法」

 老朽下水道管渠を下水道の供用を停止させず入替える工法である。また管のたるみや蛇行により更生工法では流下能力が復帰できないような場合や増径に伴う勾配変更を行う場合でも、入替えができる。
これに用いる下水道の仮排水工法は、開削で入替える場合でも供用を停止させずに入替えることができる。本会に約3年程で開削・非開削問わず約70km程の管渠の入替えに伴う仮排水について問合わせがきており、採用も年々増加している。
本稿では、各工法の説明及び代表的な事例についてご紹介する。

RPS工法協会 本事務局・技術部会員  粕川 雅敏[コマツ地下建機(株)]

管きょ更生技術「ダンビー工法」とその施工事例

※講習会テキストのみの追加記事

ダンビー協会 技術委員  尾関 直哉[(株)クボタ建設 工事本部]

様々な断面形状を自由自在に更正する大口径管渠更生工法
パルテム・フローリング工法の概要と施工事例について

※講習会テキストのみの追加記事

パルテム・フローリング協会  林 茂郎
佐野 祐一[(株)鴻池組 土木本部 技術部]