【TBM工法施工技術】
山岳トンネルの代表的な合理化施工手段であるTBMは、近年になって、めざましい発達と実績が出てきた。これは、TBMの技術的発展が寄与する部分が多いが、その効果を十分に生かす機運が高まった社会的背景も無視できない。そのような機運は我が国よりむしろ海外の方が先駆的であり、多くの効果的な実績をあげている。我が国でもその効果が具体的かつ、確実に現れてきた。そしてTBMの規模も従来の小、中断面から大断面まで実績を上げようとしている。したがって、TBM工法の採用には、その特性を十分に生かす条件を設定すべきであり、しかもTBM工法ではその名のとおり、TBMという機械への依存性が高いため、トンネルを掘進するという、施工面でもTBMの機械的特性を十分考慮する必要がある。
本報文では、TBMの発達から、機構上の特性、TBM工法の施工上特性、合理性等について総括的に解説する。
(株)熊谷組 土木本部 トンネル技術部部長 岡田 喬
-第二名神高速道路栗東トンネル上り線西工事-
栗東トンネル上がり線西工事におけるTBM施工は、平成10年6月に堀進を開始し、平成11年6月に延長2560mを無事貫通した。しかしながら、この1年の間、様々な地質的トラブルに悩まされ、1~2ヶ月の間掘進不能となる事態が2回起きるなど、TBM施工には精度の良い地山性状の予測が非常に重要であることを実感した。
本報文では、これら地質的トラブルを克服した経緯について述べるとともに、種々の地質調査による切羽前予測法とTBM施工実績について紹介するものである。
西松建設(株)関西支店 栗東トンネル出張所 田中 義晴
従来TBM工法では、崩壊性地山に遭遇した場合、支保作業に多大の時間を要し、高速性と安全性を阻害する問題があった。今回開発した支保システム(ロックライナー工法)はTBMのルーフ内で組み立てた鋼製ライナーをルーフ直後で拡張し、坑壁に密着させることで地山の崩壊やゆるみの拡大を防止することができる。
本システムを掘削径5mの改良オープン型およびシールド型TBMに適用した結果、支保構築時間の大幅短縮が可能となり、合理的な高速施工を実現した。
(株)奥村組 本社土木部課長 中山 隆義
(株)奥村組 関西支社土木部課長 井上 昭治
(株)奥村組 本社土木部副課長 奥野 三郎
日本におけるTBMの施工事例は約140件に及ぶが、掘削径7.0mを超える大断面TBMの例は3件である。過去から現在まで国内TBM施工では不良地山克服が最も大きな課題であり、特に大断面TBMではその影響を受ける可能性が高いと想定される。一方、大断面TBMでは各種対策工設備を装備し実施できる利点もある。本稿では、日本国内最大掘削径8.3mのTBM施工に当たり開発・活用した技術および施工結果について述べるとともに、今後ますます大口径化するTBMの課題についてまとめたものである。
大成建設(株)土木本部 土木技術部 トンネル技術室副部長 領家 邦泰
第二名神鈴鹿トンネル下り線工事は三重県と滋賀県とを結ぶ約4Kmの長大トンネルである。本トンネルは190m2に達する超大断面のため、TBMによる頂設導坑先進工法が採用されている。この導坑に直径5mのオープン型のTBMを採用し、急速施工システムを採用したところ、月進769mの日本記録(現在でも直径3m以上の記録)を達成することができたので、この計画と実績について述べる。
鹿島.東急.不動建設共同企業体第2名神鈴鹿トンネル下り線工事所長 鍜治 茂仁(鹿島)
鹿島.東急.不動建設共同企業体第2名神鈴鹿トンネル下り線工事課長 上田 昭郎(鹿島)
東海北陸自動車道の城端・袴腰トンネル避難坑は各々3.1kmと5.9kmのトンネルが連続するトータル延長9.1kmの長大トンネルであった。80%以上が良好地山という地質調査の結果からオープン型TBMが採用された。しかし、地質状況は調査結果と大きく違い、掘削延長95%の岩級区分が2ランク悪い方向へ変化した。しかしながら、軟弱地質区間の支保方法を従来と変えたことにより、崩落量が少なくなり、TBM掘削を崩壊現象で停止することなく、DI岩級での施工速度を大幅に向上させた。その支保方法と効果について報告する。
ハザマ・大日本土木(株)共同企業体袴腰・城端トンネル作業所所長 山田 義教
ハザマ 機電部部長 高津 荘太
日本の複雑な地質条件や小断面のトンネルをTBMで施工する場合には、支保・運搬・掘削の各要素においてTBMの連続掘進を阻害する問題点が存在しており、TBMの潜在能力を十分に発揮できない場合がある。新大長谷第一発電所の導水路工事では、計画段階でそれら問題点を抽出、「自動吹付けシステムによる掘削・覆工の同時施工」「小断面複線ずり搬出システム」「TBM機械データによる新地山評価システム」等さまざまな技術開発を行い掘進速度の向上を図った。その結果、平均月進381m、最大任意月進785mを達成し、いずれもトンネル進行の日本新記録を更新した。
佐藤工業(株) 土木本部 技術部門 トンネルグループ課長 星野 孝則
佐藤工業(株) 土木本部 技術部門 トンネルグループ副課長 松口 一彦
佐藤工業(株) 土木本部 技術部門 トンネルグループ係長 小林 裕二