第45回「シールドトンネル工法施工技術」講習会
近年のシールド工事では、施工スパンの長距離化に対応して高速施工が強く求められている。この要求を満足すべく、シールド機前胴部の首振り機構による方向修正システムを有する「F-NAVIシールド工法」を開発し、同時施工を可能として高速施工を実用化した。施工実績では、月進500m以上と従来の2~3倍の施工速度を得ることができ、大幅な工期短縮とコスト縮減を実現した。
本稿では、本工法の開発、『埼北幹線?期その1浦和大門工区シールド工事』での現場施工状況と高速施工の実績について紹介する。
清水建設(株) 土木本部 技術第二部 副部長(技術士) 後藤 徹
清水建設(株) 土木本部 技術開発部 副部長 宮沢 和夫
1985年に実用化された気泡シールド工法は、1999年4月現在で350件の採用実績があり、総施工延長は355kmに達している。採用された工種は、上・下水道、鉄道、電気通信管路、共同溝など多岐にわたり、特に、その切羽の安定性、流動性、止水性に対して高い評価を受けている。また最近では、排出土の地山の土砂に近い性状に復元することから、一般残土としての取り扱い例が多く、環境に優しい工法としても注目されている。
本稿では、約15年間の気泡シールド工法の実績データ、および最近の採用事例について述べる。
(株)大林組 土木技術本部 技術第二部課長(技術士) 守屋 洋一
省面積立坑システムは、発進立坑用地の省面積化とコスト縮減、環境保全を目標としている。
システム要素技術の中でも、固形回収システムと濃縮サイクロンは環境保全技術として、注目されている。固形回収システムは、地山を固形状態で回収することにより余剰泥水量を減らせるため、泥水処理設備を縮小でき、産業廃棄物処分土を減量できる。従来、全溶解で設計されているN値10前後の粘性土が現在、固形回収率40~50%で施工されている。まは、濃縮サイクロンで処理された比重1.5程度の濃縮スラリーは、流動化処理土の原料として高品質な性状を持っており、埋戻し土として再利用が可能であり設計にも組み込まれ、コスト縮減にも寄与している。
本稿では、これらの技術の現状と今後の技術動向について述べる。
戸田建設(株) 東京支店 土木部機電課長(技術士) 岩井 義雄
戸田建設(株) 省面積立坑システムプロジェクト主査 田畑 覚士
市街地でのシールド施工における課題のひとつに、急速な都市化の進展による立坑用地確保の困難性が挙げられる。このような状況のもと、関西電力(株)では500kv超高圧送電線の大阪市内直接導入を図る、過密都市部での超長距離シールド工事を施工中である。
本稿ではこのうち最長距離(6,450m)を中間立坑等を設けず掘進する『学園豊崎間管路新設工事(第3工区)』について長距離高速掘進を前提としたシールドマシン、セグメント、その他の施工設備についてその詳細を述べると共に施工経過を報告する。
関西電力(株) 中央送変電建設事務所 地中送電工事課 チーム課長 小山 茂
大成建設(株) 関西支店 関電万博南シールド作業所工事課長(技術士) 脇田 雅之
埼玉高速鉄道線戸塚トンネルでは、シールドトンネルのインバートに河川浄化用導水管(φ1,200mm)を敷設している。また、全体工程短縮のためシールド掘進から本設の設備、軌道工事に至るまでを同時に施工する必要があった。このため、導水管敷設装置やバッテリーロコ昇降装置を開発・導入し、一体施工システムを確立した。また、到達部ではJR武蔵野線橋梁と交差し、既設構造物と離隔数センチ、延長45mにわたる近接施工区間があり、営業線の安全運行確保と周辺構造物に影響を与えることなく施工することが要求された。
本稿では、一体施工システムの概要と近接施工の計画とその結果について述べる。
日本鉄道建設公団 関東支社 川口鉄道建設所副所長 石徳 博行
(株)熊谷組 北関東支店 東川口地下鉄作業所工事課長 焼田 真司
近年、都市部におけるシールド工事では、作業基地ヤードなどの問題から大断面トンネルにおいても泥土圧シールドが採用されはじめている。しかし、大断面トンネルで多くの実績がある泥水式に比べて、未だ確立されていない技術的課題も多い。大断面泥土圧シールドの課題には、(1)切羽安定、(2)掘削土の塑性流動化、(3)掘削土量管理、(4)地盤変状抑制、(5)掘削土のポンプ圧送、(6)排出土砂の改質などが挙げられる。
本稿では、掘削対象土質の異なる2つの施工例(1)大阪地区シールド外径φ11.52m(大阪層群砂質土と粘性土の互層)、(2)横浜地区シールド外径φ10.00 m(沖積砂礫層)をとおして、これらの課題について考察する。
西松建設(株)横浜支店 MM線山下町出張所工務主任(技術士) 坪井 広美