第49回「シールドトンネル工法施工技術」講習会

コスト、環境のニーズに応えて
シールドの原点と技術進化、可能性
発進、到達、長距離、大断面

世界最大の泥土圧シールドの掘進管理について

従来、切羽安定保持の信頼性、排土効率の優位性といった点から、大断面シールドトンネルでは泥土圧シールドよりも泥水式シールドが有利とされてきた。本工事のシールド機は外径φ12.02mの世界最大の泥土圧シールドであり、大断面泥土圧シールドの課題を克服すべく、様々な検討・対策を行った。本稿では主に、「切羽圧の管理」、「排土量の管理」について述べるとともに、チャンバー内土砂の塑性流動状態を確認・評価するために開発・導入した「チャンバー内可視化技術」の概要と実施工への適用結果について報告する。

首都高速道路公団 東京建設局 建設第一部 池袋工事事務所 工事第三課長  櫻井 裕一
(株)大林組 首都高池袋南工事事務所 所長(技術士)  中山 正夫
(株)大林組 首都高池袋南工事事務所 グループ長(技術士)  松原 健太
(株)大林組 首都高池袋南工事事務所  河口 琢哉

シンガポール下水道プロジェクトへの取組み
延長7.7kmの長距離シールド

社会資本整備の盛んであるシンガポールにおいて、最大深度50m、硬質地盤(石英含有率が高いためビット摩耗の激しい)中に、一台の泥土圧シールド機(外径φ7.16m)で、延長7.7kmを掘進するという日本では前例のないシールド工事に取り組んだ。
工事は、想定外の高水圧砂岩層や花崗岩層に遭遇するなど、幾多の困難を乗越えて、2003年12月に無事貫通した。
本報では厳しい施工条件を克服するため、どのようなことを考え、どのような工夫を凝らしていったか、施工計画から到達に至るまでの様々な取組みとその結果について報告する。

五洋建設(株) 東京支店 飛鳥山シールド工事事務所 機電主任  網野 巌

実績1000件を超えた泥土加圧シールド工法の誕生から発展

1974年6月に特許出願された「泥土加圧シールド工法」は、今や施工件数では1000件を優に超す実績を持ち、一般化した観がある。また諸外国においても多数採用され、実質的には泥土圧式シールドと同義として認知されている。
発明者として当初から今日まで長年に亘りこの工法に係わり、その発展と共に歩んで来た者にとっては、感無量のものがある。一方、本工法は「施工管理が難しい」と言う向きもある。このような現在、温故知新の精神に則り、この技術の原点を確認する必要があると考える。どのようにしてこの技術が生まれ、発展して行ったのかを振り返ると共に、この技術のポイントについて述べるものである。

大豊建設(株)常務取締役技術本部長  加島 豊

泥水式シールドの“コスト・環境負荷低減”への技術的可能性

脱炭素社会をめざして、環境負荷低減への取り組みは、シールド工事にも求められる。泥水式シールドは、掘削、搬送、処理が流体として取り扱うことが出来るため、全体をシステムとして技術開発ができるという多くの可能性を秘めている。
本報告では最新の現状技術でのコスト・環境評価を行い、今後の技術開発についても具体的に触れ、今後の技術的可能性についても探るものである。

戸田建設(株) 東京支店 土木部 機電課長(技術士(機械部門)  岩井 義雄

圧力封入式パッキン(SPSS工法)とその実績
-大断面泥水式シールドにおける新しい到達引抜き工法-

近年の都市部におけるシールドトンネルは、地下構造物の輻輳化、道路トンネルを始めとする大断面化、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」の制定などによる大深度化を背景として、シールド工事の施工条件の難易度は増しているが、さらに安全で経済的な施工を達成する技術が求められている。圧力封入式パッキン工法(SPSS工法)は、大断面や大深度の高水圧など厳しい条件下におけるシールドの発進及び到達引抜き作業を、安全・確実・経済的に施工できる新しい坑口パッキン構造を特長とする工法である。本報告は、圧力封入式パッキンSPSS工法を適用したマシン引抜き到達の施工例として、大断面泥水式シールド(φ12,140mm)のUターン方式による到達と地盤改良を省略した泥土圧シールド(φ2,280mm)の到達の実績について述べるものである。

前田建設工業(株) 土木本部土木技術部 部長(技術士(建設部門)  北川 滋樹
前田建設工業(株) 土木本部土木技術部 副部長(技術士(建設部門)  一原 正道
前田・三井住友・白石特定建設工事共同企業体 所長(技術士(建設部門)  村山 研一

スライドゲート
地盤改良を不要としたシールド発進・到達工法

この工法は、ケーソン工法(アーバンリング工法等)による立坑において、工場製作されたスライドゲートをシールド発進・到達の開口位置に設置し、所定の位置まで沈設する。沈設完了後、本ユニットにエントランス部分を取り付け、シールド機を所定の位置に設置(発進)またはスライドゲート手前まで掘進(到達)後、エントランス内を外圧と同圧となるよう高濃度泥水を充填し、圧力を保持しながらゲートを引上げて安全確実にシールドの発進・到達を行うものである。
本工法により、台東区池之端三、四丁目付近再構築工事においてシールド到達を施工した。本稿では、工法概要及びシールド到達までの経過について報告する。

佐藤工業(株)東京支店 上野公園作業所 所長  森山 光雄
佐藤工業(株)東京支店 上野公園作業所  上地 勇
佐藤工業(株)土木本部 技術部門シールドグループ  小野 崇