第52回「シールドトンネル工法施工技術」
泥土圧による切羽の保持と掘進管理を用いている泥土加圧、DOT、DPLEXシールド工法の各種特殊条件での施工事例について、工事の概要と採用経緯、施工結果を報告するとともに、今後の泥土圧シールドへの課題と可能性について述べる。
大豊建設(株) エンジニアリング本部 技術開発部次長 技術士(建設部門) 近藤 紀夫
大深度かつ長距離シールドを経済的に施工するためには、カッタビットを機内から容易に交換できる機械式カッタビット交換工法が有効である。近年、土質条件のきわめて厳しい長距離工事が増加し、それらに適応できる機械式カッタビット交換工法が必要とされている。
このたび、神戸市水道局発注の大容量送水管(王子工区)整備工事において「地上から地盤改良することなく、すべてのローラーカッタを機械式により交換するトレール工法を適用し、巨礫を含んだ砂礫層(L=3400m)の長距離掘進を行った」。本稿は、その施工結果について報告する。
飛島建設(株)土木事業本部 機電部 担当課長 技術士(建設部門) 西 明良
~外径6.45m,延長2,620m,土被り30.5m,R60m≧急曲線12ヵ所,近接施工6ヵ所~
本工事は、千葉市内の浸水対策と水質改善を目的とした中央雨水幹線整備計画の内、1号貯留幹線の下流側に位置する2工区を泥水式シールド工法で施工するものである。
同幹線ルートは、既設地下構造物や埋設物が数多く点在する市街地内を通過するため、急曲線が数多く配置(R30×5、R40×1、R50×1、R60×5)された非常に複雑なシールド線形となっている。また、近接施工等に伴う影響低減の目的で土被りも30mと深く、高水圧が作用する滞水洪積砂層(成田砂層)の厳しい土質条件である。
この難条件下で長距離・多急曲線掘進におけるカッタービット・中折れ装置・テールシール等の耐久性や急曲線部の近接施工等の課題も多く、それらの対策と掘進実績について報告するものである。
ハザマ 関東土木支店 千葉中央幹線作業所 所長 山口 忠美
名駅南雨水幹線は、名古屋市が進めている「緊急雨水整備事業計画」のうち、名古屋駅周辺の約76haを計画区域とした浸水対策事業の一部である。雨水貯留管となる横坑は土被り約30mに位置し、名古屋駅の南側を東西に横断しているシールドトンネルである。
横坑の到達場所としている地上付近は、道路が狭隘で交通量も多く、商業施設が密集しているため、事前に到達立坑を設けることが困難であった。そのため、横坑を掘進したシールド機を地中残置とし、別のシールド機で地下から地上に向けて立坑を掘るという、全国で2例目となる上向きシールド工法を採用し、雨水流入用、排水用の2つの立坑を施工した。
上向きシールドは、横坑のセグメントを直接切削して発進するという特徴がある。今回は2種類の特殊セグメントを切削して発進した。
大成建設(株)名古屋支店 名駅南雨水幹線作業所 原 信行
阪神高速8号京都線(山科~鴨川東間)は東山連峰の南端に位置する稲荷山をトンネルで横断して、京都市伏見区と山科区を結ぶ全長およそ2.8km、往復4車線の自動車専用道路であり、東行き線と西行き線の2つのトンネルからなっている。このうち当工事は約855m区間をシールド工法で施工するものである。
当工事の最大の特徴は、1台のシールド機で被圧水下の土砂層と破砕帯を含む岩盤層を掘進することであり、このためにシールド機を岩盤対応型にするとともに、土砂と岩盤の層境部で土砂用ビットから岩盤用ローラカッタへの交換を行った。このほか、低土被りでの発進(土被り4.8m、0.4D)、発進直後の琵琶湖疎水横断(離隔4.4m)、2本の営業線直下の防護工なしでの横断等の近接施工や、約500m区間にわたる民家密集地帯直下の通過等、非常に厳しい条件下での施工となった。
(株)大林組 本店 阪神高速伏見工事事務所 所長 技術士(建設部門) 東出 明宏
「省面積立坑システム」の施工実績は、現在43件に達している。最近、大断面、長距離シールドでの運用に当たっての技術照会が研究会事務局に寄せられております。
当報告は、システムの要素技術である「固形回収システム」「リアルタイム切羽安定管理システム」「泥水濃縮システム」等の適用と高速施工、コスト縮減に向けた検討内容について述べるとともに、外径12.5m級の泥水式、泥土圧シールドでの計画例を示しながら、今後の技術展開を試みるものである。
戸田建設(株)東京支店 土木部 機電課長 技術士(機械部門) 岩井 義雄