第53回「シールド・トンネル工法施工技術」講習会

シールド技術の更なる展開
“厳しさを増す施工環境に挑戦”

軟岩層における長距離・小口径シールドの施工

横浜市では、保有水源の一つである道志川水系の老朽化した2路線の導水管をφ1,500mmの導水管として1条化する事業を進めている。その中で本工事は、神奈川県相模原市内において、導水管布設用のトンネルを泥水式シールド工法により築造するものである。
工事の特徴として、軟岩層(一軸圧縮強度 2,000~7,000kN/m2、RQD値 平均70%以上)内での施工であること、掘進延長L=3,260mの長距離施工であること、内径φ2,150mm(シールド外径φ2,480mm、セグメント外径φ2,350mm)の小口径であることが挙げられる。
本稿では、さまざまな工夫を織り込んだ施工計画および施工結果について報告する。

(株)間組 関東土木支店 横水シールド作業所 工事主任  本山 康貴

複合式シールド工法による長距離掘進と丘陵・河川横断

本工事は送配水施設整備事業(多摩丘陵幹線第二次整備区間)の一環として、昭島市の拝島増圧ポンプ所から八王子市丹木町までのL=2,367.1m区間を複合式シールド工法によりトンネル築造する工事である。
施工区間には最大土被り約80.0mになる丘陵(都立滝山自然公園・旧滝山城跡)、河川幅670mの多摩川一級河川があり地上部の制約を受ける。多摩川には水道局所有の水管橋が設置されており、既設水管橋直下(基礎との最小離隔3.7m)を掘削する。
段丘や河川があるため十分な土質調査が出来ず逸水する危険性がある。又、トラブル時に地上から補助工法を用いることができない理由から、泥水式と土圧式を使用できる複合式シールド工法を採用することとなった。本稿では、その施工結果について報告する。

西松建設(株)関東支店 八王子シールド出張所 係長  島田 寛之

大深度・急曲線・内水圧対応貯留管の建設

-新羽末広幹線(太尾・駒岡区間)第一工区-

横浜市環境創造局は鶴見川流域での浸水対策事業として新羽末広幹線の整備を進めている。すでに一部は供用中であるが、完成すれば全体延長20kmにもおよぶ貯留管網であり約41万m3の貯留が可能となる。そして時間降雨量60mm(10年に1回程度の降雨)に対応できることになる。
本施工においては、新羽末広幹線のうち最上流部、太尾~駒岡区間の貯留管の施工(仕上り内径φ6,500mm泥水式シールド工)について当該工事が特徴とする(1)大深度高水圧施工 (2)急曲線施工 (3)内水圧対応について、施工に際し講じた対策等紹介する。

大成・三井住友・保土ヶ谷建設共同企業体 担当所長 技術士(建設部門)  藤堂 憲幸

市街地における玉石混じり砂礫層の掘進と
二次覆工コンクリート長距離圧送への挑戦

本工事は、仙台市発注の合流式下水道緊急改善事業の一環として、汚水の一時貯留管(仕上がり径3000mm、延長1369m)を気泡シールド工法にて築造するものである。本稿は、工事の課題となった市街地における気泡シールド工法による玉石混じり砂礫層の掘進、最長600mという二次覆工コンクリートの長距離圧送に対する技術的対策、施工計画及び施工実績について報告するものである。また、近隣に区役所、学校が存在する閑静な住宅地域内に設置した発進立坑ヤード防音設備や、周辺環境対策、イメージアップなどについても報告する。

清水建設(株)東北支店 土木部 仙台七郷堀シールド作業所 所長  酒井 俊一
清水建設(株)東北支店 土木部 仙台七郷堀シールド作業所 工事主任  磯部 哲
清水建設(株) 東北支店 土木技術部 部長 技術士(建設部門・総合技術監理部門) 入江 正樹

φ1000mmを超える大径の巨石が混じる砂礫層(827m)を
破砕型泥土圧シールド(φ2370mm)で施工

本工事は、群馬県みどり市大間々町において雨水による浸水被害を軽減するため内径φ1800mmの雨水幹線を築造するものである。工事は、渡良瀬川の形成した砂礫混じり巨石層(大間々扇状地砂礫層)において泥土圧シールドを掘進延長L=826.941mにわたり施工するものである。この砂礫混じり巨石層は、φ1000mmを超える大径の巨石が点在しており、その強度も一軸圧縮強度 150~250MN/m2と高強度であり、N値50以上の非常に密実な地盤である。シールド掘進での巨石破砕の負荷は大きく、地盤振動とローラーカッターの摩耗・損傷が発生した。本稿では、その施工計画と結果、対策について報告する。

戸田建設(株) 関東支店 大間々シールド作業所 所長  後藤 芳隆

マドリッドでのφ15m大断面泥土圧シールド高速施工

スペイン・マドリッド市内を走る直径が約30kmの環状道路「M30」は、交通量の増加に伴って、渋滞の慢性化や排気ガスによる周辺環境の悪化、市街地の分断などが問題となっている。これらの課題を解決するために、ジャンクションの再整備、道路の地下化や地上部の拡幅、バイパス(迂回路)の増設などの整備事業が実施され、2007年5月に開通した。
このM30の中でも慢性的な渋滞が問題となった南ジャンクションを迂回する南工区トンネルは、掘削延長約4kmの大断面シールドで、MHI-DF社(MHI-Duro Felguera社)によって製作された泥土圧シールド(φ15m)によって掘削された。発進部は地下水を含んだ軟弱地盤であるため、日本のシールド技術とトンネル掘削のノウハウが必要とされ、大林組が技術協力を行うこととなった。本稿はそのトンネルと施工設備概要、施工実績について述べるものである。

(株)大林組 機械部 技術第一グループ 専門技師  的場 一彦

粘性土を含む複合地盤に適応した
岩盤対応泥水式シールドの計画と施工

シールド工法は、粘性土、砂質土、玉石混じり砂礫、中硬岩程度の岩盤まで、適用範囲を広げているが、近年、工事の長距離化に伴いシールド通過区間の土質が複雑に変化し、これらが混在した地盤に適応できるシールドマシンが要求されている。本稿では、トンネル通過区間に粘性土、砂礫層、岩盤層が交互に出現する流域下水道整備工事(福島県県北流域下水道愛宕山工区)において、シールドマシンを計画する上での技術的課題とマシン選定の経緯、および施工結果について述べる。