第54回「シールド・トンネル工法施工技術」講習会
本工事は、東京都台東区三ノ輪~東上野間の既設下水道管渠の能力増を図るため、新しく管渠(掘進距離2834.75m、仕上り内径2400mm)の新設を泥土圧シールド工法にて築造するものである。
近年、都市土木工事においては、シールド路線の複雑化がなされているが、本工事は、30Rが1箇所、20Rが1箇所、15Rが8箇所と多数の急曲線施工があるのに加え、路線前半はN値0の軟弱地盤であり、主要幹線である国道4号線および地下鉄日比谷線の横断を含む複雑な路線であった。
本稿では、その施工実績について報告する。
五洋・安藤・名工建設共同企業体(特) 下谷シールド工事事務所 工事主任 福田 善宣
近年、大断面シールドにおいても急曲線施工が多く見られる。その場合、シールド掘進に必要な地盤反力の確保が難しい、裏込め材がテール部から坑内へ流入する、等の問題が発生している。その問題を解決するため、セグメント背面に膨張袋を設置してその内部に裏込めを充填して地盤反力を確保するとともに、テール部からの裏込め材の流入を遮断するEバッグ工法を開発した。
博多駅地区緊急浸水対策事業の「比恵9号幹線築造工事」はS字急曲線(R=20m、R=30m)や急曲線(R=40m、R=60m)のあるシールド工事である。今回,その内R=40m区間においてEバッグ工法を適用したのでその施工結果と、S字急曲線での施工結果等について報告する。
錢高組 技術本部 技術研究所 技術士(建設部門) 竹中 計行
近年、ニューマチックケーソン工法は、遠隔操作による無人化掘削工法が一般化し、高気圧障害発生が大幅に削減され、大深度地下構造物の建設に大きく貢献している。しかしながら、掘削機の日常点検、修理、解体・回収作業および沈下完了後の地耐力試験は、依然として有人による高気圧下作業が必要であることから、高気圧障害リスクを完全に排除できず、これらの無人化施工が求められ、当社でもその取り組みを行ってきた。
このような状況の中、完全無人化のNew DREAM工法を開発し、第1号工事として横浜湘南道路立坑設置工事(幅36.4m×23.8m 深さ44.35m)に採用され、施工を行った。
本稿では、New DREAM工法の概要、工事概要、工事の課題、課題に対する対策、New DREAM工法の効果および今後の展望について報告する。
大豊建設(株) 東京支店 土木部 湘南ケーソン作業所 長崎 正幸
本工事は、向日市の浸水対策事業として石田川2号幹線管渠(仕上り内径2600mm・L=842m,1500mm・L=880m)を親子シールド(気泡)により築造したものである。親子シールドの特長は、1台のシールド機で仕上り内径2600mmの管渠を発進立坑から断面変化点まで構築し、断面変化点において地中で子機を分離後に再掘進し、上流側約半分の仕上り内径を1500mmで築造するものである。1台のシールド機で断面の異なる管渠を築造することによりコストの縮減、工期の短縮が図られた。シールドトンネル覆工は、親機区間を二次覆工省略形のRCおよび合成(SSPC)セグメント、子機区間を鋼製セグメントとFRPM管による二次覆工を用いた。平面線形は曲線半径20~30mの急曲線が親機区間、子機区間に2カ所ずつであった。親子シールドの地中分離位置の直後に、近接構造物としてJR西日本の所有するボックスカルバートが存在した.掘進対象土層は粘性土、砂礫土と多様であり掘進も困難なものであった。これらの諸条件を全てクリアし、最終停止位置まで無事到達することが出来た。本稿では、その施工結果について報告する。
佐藤工業(株)大阪支店 土木部 向日シールド作業所 原野 潤一
本工事は、大阪府寝屋川流域浸水被害対策として展開されている大東門真増補幹線事業において、下水道貯留管渠を泥水式シールド工法により築造するものである。管渠に適用する二次覆工省略型セグメントにおいては、コストダウン・省力化・高剛性の要求事項に対応するべく「PC鋼より線」によりボルト締結を不要としたP&PCセグメントを導入し、長距離かつ大口径シールドにおける本格的施工とし、洪積粘性土層を中心とした複合地盤での安定した工程を確保するための各種シールドマシンを中心とした対策を実施した上、順調に掘進していった。
到達部においては、埋設された先行シールド機(外径φ4740mm)に対し地中で中心同士を正対接合させるため精度を要求される上、土中のメタンガス対策および地上道路占用作業の省略化を実現するため、凍結地盤改良工法を含めた地中到達から鏡切までの一連の工事をシールド機内から一切行う施工方法とし、安全かつスムーズに一連の作業を完了させた。
本稿では、これらを中心とした高速施工の実績について報告する。
三井住友建設(株) 大阪支店 寝屋川シールド作業所 工事課長 技術士(建設部門) 津嘉山 淳
過去のボックス推進工法の実績としては、補助工法を併用した人力掘削の伴う矩形推進工法や短距離の機械式推進工法がある。しかし、現在まで円形に匹敵するほどの密閉型矩形推進工法の実績は少なく、矩形を含む特殊断面の地下構造物の構築には、そのほとんどがシールド工法の領域と考えられてきた。
今回、施工を行った雨水渠は、専門技術者としては難易度の高い密閉型のボックス掘進機を使用した推進工法であり、一体型コンクリートの適用範囲としては上限に近く、長方形大断面(ボックスカルバート内空断面:2.80m×1.80m、外郭断面:3.30m×2.50m、ボックス掘進機外郭断面3.33m×2.55m)を有し、S字曲線(曲線半径100m&100m、カーブレングス45m&65m)を含む、推進長1スパン220.97mの路線設定である。
(株)アルファシビルエンジニアリング 開発部門 開発課長 榊原 政隆
(株)アルファシビルエンジニアリング 開発本部長(工博・技術士) 酒井 栄治
(株)アルファシビルエンジニアリング 技術部門 計画課長 松元 文彦