第57回「シールド・トンネル工法施工技術」

厳しい条件下のシールド
“技術対応と施工管理”

※本講習会は、土木学会「継続教育(CPD)プログラム」認定(CPD単位6.8)にて、2013年4月に開催されました。

24.7%急勾配長距離施工を含む岩盤を対象とした大深度泥水シールドの施工結果

本工事は、静岡市方面への電力安定供給及び50・60Hz地域間の相互応援能力拡大のために駿河変電所(静岡市葵区)と東清水変電所(静岡市清水区)を結ぶ16.1kmの送電線(駿河東清水線)の内、安倍川横断部分の洞道を築造するものである。中部電力駿河変電所の敷地内に深さ63.97m、内径10.5mの発進立坑を設置し、ここを起点として延長2,556m、仕上がり内径3,000mmの洞道を泥水式シールド工法にて築造する。掘削対象地盤は泥岩と砂岩の互層であり、延長約700mにも及ぶ24.7%急勾配施工を含むものである。
本稿では、岩盤泥水掘進の施工管理、急勾配施工、ローラーカッター摩耗およびセグメント計測結果等について報告する。

西松建設(株) 中部支店 中電安倍川出張所 所長 技術士(建設部門・総合技術監理部門) 坪井 広美

“可燃性ガス発生環境下における" シールド掘進工の施工実績

本工事は、川崎市川崎区内に雨水処理能力の向上を目的とした貯留管(掘削外径6,150mm、延長約2,040m)を泥土圧シールド工法で築造するものです。
掘削路線は南関東ガス田に位置していることが判明したため、シールド掘進に先立ち路線上にて可燃性ガス調査を行ったところ、シールド掘進深度に可燃性ガスが高濃度で存在していることが判明しました。
これについては、当初設計者からは問題視されていない事項であり、詳細計画が確立されている中で早急かつ効率的な対応策の立案が要求されました。
本稿では、泥土圧シールド工法掘進工における可燃性ガスの対応策についての施工実績を報告するものであります。

前田・大和小田急・株木・河合共同企業体 大師河原シールド作業所副所長(監理技術者) 稲葉 靖

市街地の幹線道路下に大規模な貯留管を築く
~『平成の太閤下水』北浜逢阪貯留管築造工事~


北浜逢阪貯留管築造工事は、大阪市の合流式下水道の改善対策施設として、幹線道路下約50mに内径φ6.0m,延長4.8kmにわたる雨水貯留管を泥水式シールド工法により施工する工事であり、大深度・長距離・高速施工への対応と地下鉄などの重要構造物との近接施工実績について報告する。
また、付属する施設として、既設下水道から越流する雨水を本線貯留管に取り込む2本の連絡渠と3箇所の会所があり、本線貯留管との接合は0.4MPaの高水圧下での施工となる。連絡渠(内径φ4.0m)は、直接切削セグメントを用いたシールド発進・到達工法により施工し、会所は上向きシールド工法により施工する計画である。

間・西武・中林・久本・青木JV太閤シールド出張所 所長  藤本 明生

泥土圧シールドの基本的な施工管理と近接構造物への影響抑制
大阪都市計画道路・大和川線シールド工事を例として

泥土圧シールド工法(泥土加圧シールド工法)を開発し世に送り出してから35年余が経過しました。その間多くの実績を積み重ねる中で発展を遂げてきた半面、失敗例も後を絶っていません。
この泥土加圧シールドの開発と初の施工をはじめ、DOTシールドの開発と初の施工、3連シールドの初の施工、φ14.3m大口径泥土圧シールドの施工など、シールド工法の開発と現場における実証に携わり、施工管理方法の確立と改善にこだわり続けてきました。このような経験の中で学んだ技術のまとめとして、泥土圧シールドの基本的な施工管理方法を再確認するとともに、施工に伴う沈下(地盤変位)はやむを得ないものではなく、施工管理で抑えることができることについて述べます。

大鉄工業(株)土木支店 大和川線シールド作業所 監理技術者  冨澤 勉

硬岩に遭遇したシールドの施工実績と対応策

近年、シールド工法の掘進対象土層は、従来の軟弱地盤から砂礫層に留まらず、TBMの領域に近づく、巨石を含む砂礫層から岩盤層まで幅広く求められている。一方、覆工については技術の進歩と工期短縮や経済性の観点から、二次覆工省略型セグメントや幅広セグメントの採用、セグメント厚さもより薄くなるケースが多くなってきている。
本工事は、高知市の雨水管路(急曲線R=25mを含むL≒770m)の直線区間に二次覆工省略型セグメントを採用し、一軸圧縮強度q=130N/mm2以上の岩盤区間と岩と砂層の互層区間を主体とした土質の掘削を、岩盤対応の泥土圧シールド工法にて築造した。
本稿では、施工途中の推力上昇や急曲線部での胴締め等の困難を克服したその施工実績について報告し、今後のマシン検討、セグメント選定、急曲線対応の留意点について考察する。

佐藤工業(株) 東京支店 土木部 工事課長  道嶋 弘志

シールド掘進の状況把握と対応

私は、1965年10月に初めてシールド工事を担当し、2013年現在もシールド関係に携っております。
順調なシールド工事では、掘進を始めたら何時の間にかトンネルが貫通し、シールド掘進の状況がどの様であったか記憶にありません。しかし、開放型圧気シールドの砂礫地盤の掘削では「土砂と大量出水」に対応した記憶が鮮明に蘇ります。
密閉型シールドでは、シールド機が進まなくなり、原因を把握するのに時間を要したり、対策が遅れたり、路面陥没が生じて対応に追われた事が想いだされます。また、シールド機の発進・到達で失敗した多くの事例を見聞きしています。
今回は、掘削ができないカッターヘッド、切羽崩壊の状況と地盤崩壊の状況把握、シールド機発進・到達の失敗例とシールド機の確実な発進・到達方法について私の考えを述べます。

(株)STD 代表  園田 徹士