第64回「シールド・トンネル工法施工技術講習会」

シールド“難条件の克服へ”
施工計画と対応技術

※本講習会は、土木学会「継続教育(CPD)プログラム」認定(単位6.9)にて、2020年7月に開催されました。

大口径、大深度立坑の急速施工~アーバンウォール工法~
都市域の施工環境下に対して開発した都市型圧入ケーソン工法

 近年、構造物の地下化がさらに進み、大口径・大深度の立坑を急速施工する技術が求められる。アーバンリング工法が有する狭隘地・急速施工の特長を活かしつつ、これまでアーバンリング工法で対応できなかった直径15mを超える大断面立坑用として、アーバンウォール工法を開発し、実証施工を実施した。
 ここではアーバンウォール工法の開発にあたって実施した本体や継手部の曲げ試験と実証施工(φ11.6m)について報告する。

JFE建材(株) セグメント技術部 セグメント商品技術室長 松岡 馨

岩盤対応型シールド機での長距離掘進計画と施工実績
―高水圧・大量湧水発生に伴う掘進途中での排土方式の変更―

 本工事は、札幌市水道水源の保全を目的として国立公園内にバイパス導水路(内径2,200mm、延長3,286m)を築造するものである。  
 地質は、qu=5~72MN/m2の安山岩・凝灰角礫岩・石英斑岩等で、岩盤対応型泥土圧式シールド機により掘進を開始した。 シールド機に作用する最大水圧は到達手前の沢部で0.3MPaと想定していたが、1,226m掘進中に高水圧0.5MPaを計測すると共に、 排土口から掘削土砂と共に大量の湧水が噴出し、掘進を一時停止した。排土方式を泥水循環方式の流体輸送に変更し、地中 接合点に到達することができたが、排土方式変更後も断層破砕帯と思われる地層に遭遇してシールド機拘束や、到達手前の 沢部では岩塊によるスクリューコンベア閉塞があった。
 本稿では、長距離岩盤掘進に対する事前の対策や発生したトラブルへの対応について報告する。

(株)鴻池組 東京本店 豊平川シールド工事事務所 監理技術者 加藤 卓男

都市部における小土被り軟弱地盤下で泥土圧矩形シールドを適用した地下通路の建設

 東京の虎ノ門地区では、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて複数の大規模再開発が進行しており、交通結線機能の強化を図るため、日比谷線虎ノ門ヒルズ駅(新駅)の整備やバスターミナル整備、これらを繋ぐ歩行者用地下通路の整備が進められている。
 本工事は、延長約370mの地下通路を構築するものであり、そのうち港区道部の約218mの区間に、国内でも施工実績の少ない泥土圧矩形シールド(シールド機外形W7.92m×H5.02m)を適用した。シールドの土被りは3.0m~5.6m、掘削対象地盤はN値が0~2程度の軟弱な沖積粘性土であり、直上に重要なインフラ埋設物が多数存在する。
 本稿では、都市部の小土被り軟弱地盤下における、泥土圧矩形シールドの課題と解決策、施工実績について報告する。

(株)大林組 東京本店 虎ノ門地下通路工事事務所 工事長 河口 琢哉

厳しい施工条件での長距離泥水式シールドの施工実績

 本工事は、大阪市北部の抜本的な浸水対策として外径6mの泥水式シールド工法で延長4,080mの下水管渠を構築する工事である。
 路線には6箇所の急曲線(R=30m)、鉄道等の7箇所の重要構造物との近接施工箇所を含んでおり、供用中の既設下水人孔に斜めに到達するものであった。また、事前の可燃性ガス調査では高濃度メタンガスが存在することが判明し、当初設計の泥土圧から泥水式へシールド工法を変更した。さらに、発進から約3km地点では延長400m以上にわたる旧河道域の緩い砂礫層を含む複雑な地層に遭遇し、著しい逸泥現象と地表面の隆起と沈下が発生し、掘進を一時停止したうえ、調査・逸泥試験にもとづく対策を実施し、再掘進を行った。
 本稿ではこれらの厳しい施工条件への対応や発生したトラブルへの対応について報告する。

(株)安藤・間 大阪支店 大隅十八条シールド作業所 所長  鳥山 孝治

液化CO2凍結工法と受入れ室を併用したシールドの到達実績
~土被り59m、水圧0.65MPa~

 シールドの立坑到達にあたっては、シールド本体と到達立坑壁間からの出水による到達立坑の水没、土砂流入による周辺地盤の陥没といった危険があるため、その防止対策を十分に検討する必要がある。
 東京都下水道局が整備を進めている芝浦水再生センターと森ヶ崎水再生センター間8kmを内径6000mmの連絡管で接続する事業のうち、中間発進立坑から森ヶ崎水再生センター間2.3kmのシールドトンネル工事が完了した。土被り59m、水圧0.65MPa、シールド到達部直上には下水道局施設が稼働中であるという過酷な条件下で、シールドで直接切削が可能な仮壁、受入れ室、液化CO2を用いた凍結工法を併用し、シールドを安全に到達させた実績について報告する。

鹿島・飛島・大本特定建設共同企業体 森ヶ崎シールド工事事務所 現場代理人 末永 俊之
ケミカルグラウト(株) 技術本部技術開発部 塩屋 祐太

大断面φ13.59m泥土圧シールドの本掘進報告と
付帯する支障物撤去工事、換気所工事報告 
-横浜湘南道路トンネル工事(その2)-

 国土交通省が整備を進める圏央道の一部である横浜湘南道路は、片側2車線の自動車専用道路であり、本工事は、そのトンネル部分を2機のシールドを用いて築造するものである。
 前回第63回(2019年4月)では、当社が開発した切削可能セグメントによるR=100m急曲線部施工を含めた初期掘進結果について報告した。今回は、続報として本掘進設備計画と掘進状況に加え、同時に施工している支障するφ600鋼管杭撤去工事、および、壁厚2,000mmの鋼製連壁による換気所工事の状況について報告する。

西松建設(株) 関東土木支社 横浜湘南道路工事事務所 所長 技術士(建設部門・総合技術監理部門) 坪井 広美

礫層地盤における泥土圧シールド“掘進用添加材計画とその対応”

 シールド工法は、近年、泥土圧シールドが主流となりつつある。特に、礫層地盤においてはどのような掘進用添加材を選定するかが、工事の成否を大きく左右する。自分自身、手探り状態で掘進に苦労した工事が数多く存在した。そこで、多種多様な掘進用添加材がある中、我々、シールド技術者として如何に掘進対象土層にマッチした材料を見つけ出すかについて、 本稿では、筆者がこれまで経験してきた施工事例をもとに泥土圧シールド用掘進用添加材 選定のポイントをとりまとめた。
 また、掘進に際し、シールド機器において工夫した点など、これからの若手シールド技術者に伝えたいノウハウについても記述する。

戸田建設(株) 名古屋支店 土木工事部 技術課 課長(技術士) 堀 昭