第65回「シールド・トンネル工法施工技術講習会」

シールド技術 “更なる前へ”
厳しさへの克服に向けて

※本講習会は土木学会「継続教育(CPD)プログラム」認定(CPD単位6.7)にて2022年4月に開催されました。

巨礫混じり砂礫層と硬質粘性土層に対応した泥土圧シールドの計画と実績
シールド外径φ3,080mm 路線延長 L=1,340m

 東京都水道局では、老朽化した施設の更新やバックアップ機能を確保するため、「東京水道基幹施設再構築事業」を進めている。本工事は、事業の一環である村山貯水池(多摩湖)から境浄水場間の総延長11kmに計画された導水施設の二重化工事のうち、西東京市向台町四丁目から武蔵野市関前一丁目間における区間約1.34kmのトンネルを築造する。
 掘削対象は、事前調査で確認された最大径500mm以上の巨礫混じり砂礫層と非常に硬質である粘性土層の互層 盤であり、シールド掘進では巨礫への対応と硬質粘性土の切削性向上が求められた。
 本報告では、これらの地盤条件ほか各種課題について施工上の対策と施工実績について報告する。

西松建設(株) 関東土木支社 向台出張所 所長 齊藤一男

N値ゼロの超軟弱地盤における泥土圧シールドの対策と施工
―浸水対策事業 シールド外径φ3,490mm 路線延長L=1,298m―

 東京都墨田区に厚く分布する有楽町下部粘性土層は、その大部分が標準貫入試験の重錘が自沈してしまうほどの超軟弱地盤である。墨田区の浸水対策事業の一環として発注された本工事(京島幹線その2)では、泥土圧シールドにより施工するほぼ全域でN値ゼロの有楽町下部粘性土層中を掘進する計画となっていた。そのため、シールドの掘進に伴い、近接する鉄道施設や各種埋設物において大きな沈下が発生する可能性があり、各種対策を講じる必要があった。
 本報告では、超軟弱地盤中のシールド施工における課題と実施した対策を紹介するとともに、類似工事において留意すべき点などについて解説する。

東急建設(株) 土木事業本部 技術統括部 土木技術部 トンネルグループ 田中悠一

両発進立坑から泥土圧流体輸送方式シールドによる礫層地盤下での2路線同時掘進の計画と施工実績

 岡山市では、岡山市水道事業総合基本計画(アクアプラン2017)に基づき、施設・管路の耐震化を進めている。本工事は、市内中心部および南西部へ配水する半田山線管路約3.5kmをシールドトンネル(シールド機外径2.13m)により、両発進立坑から北へ約2.1km、南へ約1.4km築造するものである。掘進対象土層は洪積礫質土(N値50以上)であり、JR高架橋との近接施工および地下道路の直下を通過する線形であった。隣接する先行工事の実績から2路線を順次、掘進した場合、工事着手時期の遅れに伴う工期遅延の可能性が高いと判断し、2路線を同時掘進することにより工程短縮を図った。本稿では、これらの施工条件下における両発進立坑からの2路線同時掘進の計画と施工実績について報告する。

戸田建設(株) 広島支店 半田山線シールド作業所 所長 白石拡大
機電主任 高橋知弘
工事主任 和田征也

市街地での雨水貯留管築造工事における泥土圧シールドの施工実績
主要幹線道路直下シールド外径φ4.53m 延長L=1,398 m

 福島県郡山市では、ゲリラ豪雨による内水氾濫対策として、調整池や貯留管など、雨水貯留施設の整備事業を行っている。これら整備事業のうち、本工事は外径Φ4.53mの泥土圧シールドで地下貯留管を築造するものである。シールド工事の発進基地は住宅地の公園内にあり、発進直後2箇所の急曲線区間(R30m、R25m)を経て、交通量の多い主要幹線道路直下を掘進する工事である。また、掘削対象土は、石英含有量の多い砂礫層が主体となっているため、カッタービットの摩耗や欠損が危惧された。
 本稿では、これら困難な条件下での施工上の対策と施工実績について報告する。

(株)大林組 東北支店 郡山シールド JV工事事務所 工事長 小里光男

河川直下を縦断する連続多急曲線シールドの施工
シールドφ6,140mm 延長L=1,034m 急曲線27箇所(R=16m~60m)

 福岡県高尾川床上浸水対策特別緊急事業は、市街地(筑紫野市)において限られた期間内に事業効果を発現させる必要があるため、従来の用地買収を伴う河道拡幅などではなく、地下河川によるバイパスで計画が進められた。その結果、高尾川地下河川の路線は、両側に家屋が密集し蛇行する狭い河川区域内に収めるよう計画され、延長約1.04kmのシールド平面線形は河川直下を縦断する形で連続する多数の急曲線(R=16m~60m,27箇所)で構成されている。
 本報告では、連続する多数の急曲線施工や、硬質地盤(風化花崗岩)の掘進といった非常に厳しい難条件下での
シールド工事の施工結果について報告する。

(株)安藤・間 九州支店高尾川シールド作業所 所長 荒東伸一

異常な地下水流速地盤における特殊な薬液注入を併用した凍結工と、難凍結性加泥材でのビット交換の施工実績

 本工事は、名古屋市西区天神山町の押切公園内の発進立坑から、名古屋市中川区山王一丁目に整備中の到達立
坑までの内径5,750mm、延長約5,000m、土被り45~49m、貯留量104,000立方メートルとなる名古屋市で最大規模の雨水貯留管であり、土圧式(泥土圧)シールド工法で構築する。主たる掘削対象地盤は海部・弥富累層第二礫層で非常に硬く締まった石英含有率90%以上のチャートが点在する地盤で、設計時点でシールド機のビット交換が発進から約1, 500m、3,200m 地点の計2回計上されている。本稿は、2回目のビット交換箇所において観測された異常な地下水流速に対応した凍結工から、その凍結地盤内でのビット交換に至るまでの、一連の流れについて報告する。

大成建設(株)名古屋支店 名古屋中央雨水幹線下水道築造工事作業所 工事課長 内田泰彦

立川段丘を貫く小口径泥土圧シールドによる長距離施工
シールド外径φ2,160mm 路線延長L=3,382m 複合地盤N値:45~125

 本工事は、立川市単独処理区の東京都下水道局への編入に伴い、立川市錦町下水処理場の処理水を東京都下水道局北多摩二号処理場に移送するための下水送水施設(開削工法)と、送水トンネル(泥土圧シールド工法)を構築 るものである。開削工事と隣接するためシールド発進基地は600平方メートルと狭く、シールド外径φ2,160mm、施工延長L =3,382mの長距離泥土圧シールドで、掘削地盤は最大径350mm以上の巨石を含む礫層や、N値50以上の非常に硬い砂層および硬質粘土層と多岐にわたり、路線途中には立川断層帯の横断や中央自動車道高架橋との近接が存在するなど、様々な課題を抱えた工事であった。また、次期工事で二次覆工が計画されているため、確実に約定工程を順守する必要があった。本稿では、これらの課題を解決するために立案した方策と実施工における適用結果について報告する。

飛島建設(株) 首都圏土木支店 JS立川シールド作業所 所長 立石久弥