第33回「最新の推進工法施工技術」講習会

推進技術の新しい展開
難条件を克服した最新技術

改築推進工法で 1.2km 国内初の大規模施工
能登震災・管渠復旧工事にアイエムリバース工法

平成19年3月に発生した能登半島地震(最大震度6強)により、石川県輪島市内の下水道管渠が約16km被災し、そのうち約1.2km(21スパン)の規模で改築推進工法/アイエムリバース工法が採用となった。地震という外的要因により既設管渠が破損、蛇行・たるみを起こしたため敷設替えによる復旧が求められ、老朽管渠を非開削で敷設替えが可能である改築推進工法が、これだけの大規模工事で適用されたのは国内初である。また、被災した既設管には推進工法により敷設された推進管(SUSカラー)があり、この工法はその既設推進管も破砕回収が可能である。
本稿では工法の紹介と工事の実績について報告する。

アイアンモール協会 技術部会員・RPS研究会員  粕川 雅敏
(コマツ)

推進工法における障害物に対する取り組みと施工例
~障害物対応工法 アンクルモール・シャトル等の施工事例~

地中には様々な構築物が輻輳している。特に都市部においては顕著であり、施工で残置された仮設構造物や老朽化した管路も多くある。新たに埋設される構造物はそれらを避けて建設せざるを得ない。しかし近年では避けるスペースもない状況から、新たに築造するものはさらに深くするか、大きく迂回するか、または地域交通等の支障となりながらも開削で除去しているのが現状である。それらは経済的に不利であり、工期も長期化するため、推進工法においても非開削での施工が求められている。
当社は推進工事において、それら要望に応えるために様々な取り組みを行ってきた。本稿では、障害物に対する技術的取り組みとその施工例について報告する。

(株)イセキ開発工機 営業技術部長  佐藤 徹

管内へのメタンガス侵入を遮断し、安全性を最優先した
新防爆型推進工法

従来、地盤内にメタンガス等の可燃性ガスが検出された場合は、原則として推進路線の見直しや管路埋設深さの変更が検討される。しかし、それができない場合には、十分な防爆対策を検討して施工が実施されている。従来行われてきた防爆対策は、掘進機や管内設備の発火源を抑えるために、機器類やスイッチ類を防爆構造とする方法が採用されてきた。この方法は改造設備費が非常に高価となることや管内にメタンガスが侵入することを容認しているという点に問題がある。
今回、これらの問題を解決するために、管内にメタンガスを侵入させることなく、コスト縮減可能なアルティミット泥水式の新防爆型推進工法を開発した。本稿では、新防爆型推進工法の内容と施工事例について報告する。

機動建設工業(株)関西支店 工事課長  吉田 桂三
機動建設工業(株)技術本部 技術部長  岡村 道夫

1スパン1,447mの超長距離推進
CMT工法φ1000mmの施工報告と課題

本工事は、豊橋市大岩・二川地区において管径1,000mm、推進延長1,447.6mをCMT工法により施工した工事です。二川本陣の史跡が残り、交通量の多い狭隘な旧東海道を推進するためには、超長距離推進が要求されました。1999年度にφ1,100mm×1,006mの施工実績がありますが、当該工事は橋台の基礎杭などの障害物や激しい土質変化など新しい挑戦となりました。
超長距離推進工事施工においては、土質変化への対応や掘進機の耐久性を初め、推進管の耐荷力と推力の低減・送排泥設備・換気設備・切削部の構造やビット交換・測量精度等など数多くの課題について検討を重ね慎重に施工しました。
施工結果としては、推進精度を確保でき、近接家屋への影響もなく無事完工に至りました。しかし、超長距離推進における問題も多く生じ、今後の研究開発への宿題が発見されました.これらの実績と課題を報告いたします。

(株)姫野組 関西支店 次長  正木 幹了

大断面(φ2800)泥土圧推進工法による
"長距離・急曲線(R25、R30)施工"

今回施工をした推進工事は、呼び径2,800mmの大口径であり、曲線半径がR=25m~30mの急曲線線形、推進距離が350m~450mの比較的長距離の推進工事である。本工事は仕様的に特徴のある工事である他、重要埋設物との近接作業という条件での推進工事であった。
まずは、φ650mmの東京ガス管との近接作業であり、R25の急曲線部においてはガス管との最終離隔は1.3mと非常に近接していた。さらに、工事区域200m以内には現在も使用している井戸が23件あり、最も近接した井戸は路線中心から13mの離隔で、井戸の深さは推進位置とほぼ同じ位置にあった。
本稿では、このような施工条件下での特徴ある仕様の推進工の施工について説明をする。

(株)奥村組 東京支社 土木部 阿久和雨水幹線工事所 所長  門口 達彦

高速施工を実現したボックス推進工法

今回、密閉型ボックス掘進機を使用した矩形推進工事を無事完工した。当現場は低土被り条件(1.0×函外高以下 ) での国道16号線横断工事であり、管理値制限(地表面変位±5mm)が厳しい推進工事であった。そのため、元請けとの協議により水平地盤改良を行い、地盤変状をリアルタイムで切羽圧力等に反映させ、地表面への影響の低減を図った。
今回開発した掘進機は、同一の駆動装置で三軸カッターを自転・公転させることで全断面掘削を行うと同時に、掘進速度の向上を図り、切羽圧力保持も可能な密閉構造として、高速施工を実現している。この掘進機を活用することで、高品質のコンクリート製品を利用した地下通路や共同溝、雨水渠等の推進工法による経済性の良好な施工が可能となった。
本稿では、密閉型ボックス掘進機の機構や開発経緯及び実施工を通じて得られた様々な成果について報告するとともに、その適用性について紹介する。

(株)アルファシビルエンジニアリング 技術部門  松元 文彦
(株)アルファシビルエンジニアリング 技術部門  森田 智
(株)アルファシビルエンジニアリング 開発部門  酒井 栄治