第37回「最新の推進工法施工技術講習会」
※本講習会は、土木学会「継続教育(CPD)プログラム」認定(CPD単位6.7)にて、2012年10月に開催されました。
シールド工法のように大口径で設備の充実が図れる空間がある場合と異なり、設備空間の狭い推進工法は、複雑な地山に対応するためにより一層の工夫が求められ、独特の創意工夫で多種多様な地盤への対応を行ってきた。そして、かつては推進が困難であった岩盤地盤も克服し、掘削できない地盤はないといえるほど推進工法の掘削技術は発展した。現在では、砂礫層や岩盤層を含む土質での効率的な施工が求められている状況にある。
効率的な掘削ができなければ、掘進機の消耗やトラブルの発生する可能性が高くなり、使用する添加材、産業廃棄物も多くなり、そのコストは膨大となる。岩盤地山での効率的な施工を実施するためには、効果的な破砕メカニズムを有した掘進機の開発が必要と考える。本稿では、新規に開発した岩盤用掘進機の適用工事例を紹介しながら、その技術的取り組みについて報告する。
(株)イセキ開発工機 工事本部 副本部長 佐藤 徹
当社は、推進工法分野の拡大を図るべく、技術開発と施工の標準化を進め、「海底推進工法」や呼び径3000mmを超える超大口径管を安全で効率良く施工できる「超大口径管推進工法」などの実用化を検討してきた。
しかしながら、これらの工事は、海底下の推進施工、また従来の概念を超える超大口径管という厳しい条件下での施工であり、万が一問題が発生した場合には、一般にいわれるトラブルという範囲に留まらず、多大な損害と共に社会的な信用も損ないかねない。当社ではこれらの課題を解決するために、長距離・急曲線推進工法として開発したアルティミット工法システムを活用・発展させ、「海底推進工法」、「超大口径管推進工法」の施工を可能にした。
本稿では、各工法の技術と施工実施例を元に施工管理方法について紹介する。
機動建設工業(株) 関東支店 工事部 工事係長 荒木 大介
今回、ご紹介させていただく工事は、水環境都市を目指す大阪市が推進する「浸水対策事業」の一環として計画された、雨水幹線管渠の築造工事であり、施工場所が住宅密集地に隣接する商業地域である上、路線は主要幹線道路であることより、生活・交通環境への影響を最小限に抑えるべく、長距離推進工法が採用されたものである。
当工事は、発進基地作業スペース、鉄道軌道下横断、時間的制約、既設人孔到達等々、厳しい施工条件下における、課題の多い大口径管長距離推進工事【φ2600mmHP L=710.55m 】である。
ここでは、小スペースにおける仮設計画への取り組みにも触れながら、最重要課題とした『大口径管長距離推進工法における推進力低減に対する捉え方と取り組み』を中心に、その計画から施工経過・実績、そして今後の課題等を報告する。
(株)福田組 大阪支店 土木部 上席工事所長 古塩 義博
(1)超急曲線型長距離対応掘進機:呼び径φ1000mm,推進延長L=890.22m,R=80+90+80+150+130+85+30+100,VR=400+350+500+500+500+150
(2)超急曲線型掘進機:呼び径φ1500mm,推進延長L=325.68m,R=50+50, VR=450+600
先ず1つ目は、関東地区における住宅密集地において、狭小な生活道路に沿った平面複数曲線かつ極端な縦断高低差のある超長距離推進の施工事例に基づいて技術的課題を抽出し、それらの対策工について実際の現場記録との比較・検証を行ったものを紹介します。
2つ目は近畿地区における農業用水路として過去に例のない内水圧対応のためのガラス繊維管を用いた急勾配かつ急曲線推進の施工事例について、事前のリスク評価や技術的課題とその対策、および推進力等の実態について紹介します。
(株)アルファシビルエンジニアリング 技術部部長代理 松元 文彦
(株)アルファシビルエンジニアリング 技術部積算課長 森田 智
本稿では、長距離施工の設計における留意点を これまでの経験を踏まえて、推進力、送泥および排泥、クッション材、測量等について解説する。
また、長距離施工の失敗要因および不測の事態での対応策について、今までほとんど発表されたことのなかった内容について解説する。
長距離施工のリスクを知っていただき、適正な設計および施工に役立てて欲しい。
ESS工法協会 技術・積算統括主任 檜皮 安弘
推進工事にとって測量技術は非常に重要な役割を担っている。この工法にトータルステーションを使用した自動測量システムが登場して約15年が経過した。開発当初は「計れる」というだけで満足が得られていたものが、導入現場の多様化や「より使いやすく」というユーザーの要望で改良が加えられ現在の安定したシステムに成長した。
ここではこの測量技術の最新の状況を述べると共に、トラブルやエラーの原因とその対策、さらにシステムを維持管理するためのメンテナンスについて報告する。また最近開発が進んでいる小口径推進の自動測量システムについてもふれる。
(株)ソーキ 常務取締役 稲葉 富男