第38回「最新の推進工法施工技術講習会」
※本講習会は、土木学会「継続教育(CPD)プログラム」認定(CPD単位6.8)にて、2013年10月に開催されました。
本工事は、埼玉県川口市桜町3・5丁目浸水常襲地区の浸水対策事業の一環として、戸建住宅が密集している住宅地内の幅員約6.0mの市道下に貯留管(貯留能力3,600立方メートル)を敷設するものである。貯留管は内径3.0m、延長260.75m、上下2段の離隔1.1m、最小土被り3.5mと過去に類のない上下2段・小土被りでの大口径推進工事であった。
本報告では、後施工の上段管施工時において、先行敷設された下段管に悪影響を与えず、かつ地表面に大きな沈下を与えずに施工を完了した推進技術を中心に紹介する。
(株)鴻池組 東京本店 鳩ヶ谷桜町推進工事事務所 所長 藤分 雅己
(株)鴻池組 東京本店 鳩ヶ谷桜町推進工事事務所 監理技術者 山内 佳樹
(株)鴻池組 土木事業本部 技術部 部長 神田 勇二
南野建設(株) 東京支店 営業課 課長 山田 賢二
小・中口径パイプを組み合わせることで多様な断面を形成できるパイプルーフ工法(以下同工法)が、鉄道、道路などの既設重要構造物の防護を図りながら安全にトンネルを築造できる技術として、各種地下構造物の築造に大きく貢献してきた。近年では、同工法のパイプ打設に泥水式推進工法を適用することで長距離施工が可能となり、今後も益々本技術の需要は増加する傾向にある。しかし、同工法が適用される最大の理由が、トンネル掘削による周辺への影響抑止であるにも関わらず、パイプルーフの施工自体による周辺への影響などが発生することが幾つか報告されている。
そこで、同工法の施工による影響抑止するための施策が必要と捉え、パイプルーフのパイプ打設に用いられている推進工法の地山掘削方式や打設制御、注入方法などの施工技術と周辺地山に対する影響との関連性の検証を行った。本稿では、本検証から得られたパイプルーフ施工による周辺地山への影響要因とその結果を踏まえた対策方法について記述する。
(株)イセキ開発工機 工事本部副本部長 工博・技術士(建設部門) 佐藤 徹
最近の推進工法を取り巻く環境として、立坑位置や推進ヤード占用帯の制約、硬質・巨石地盤への移行など施工環境・施工条件が極端に悪化している。そのため各工法団体は、独自のシステム開発により、それらを回避し対応しているが、徹底的なコスト縮減の中で行われている昨今の推進施工では、対策工や管理方法が不十分となり、解決の糸口を見つけにくい状況にある。
そこで本稿では、あらためて長距離・急曲線の施工事例を中心に設計時の推進力と実施工における推進力との比較・照査を通して妥当性の確認を行う他、推進管への影響にも言及し、検討を行った内容について取り上げ、推進工法において必要最低限求められる「施工管理」について検討した内容について述べる。
(株)アルファシビルエンジニアリング 技術部部長 松元 文彦
(株)アルファシビルエンジニアリング 技術部統括課長 森田 智
沿道には市街地特有の民家が密集した大都市幹線道路内において残置する旧河川跡の橋台、護岸等により発進立坑の位置変更が必要となり、複数の大型埋設物、既設橋台(地中存置)、地下駐車場出入口等が支障する中、発進立坑および長距離推進の検討、計画、施工を行った。
さらに、発進後50m地点において予期せぬ障害(御影石)に遭遇し約6ヶ月間にわたり推進施工を休止した。この長期休止期間によって生ずる地山の締付けによる推進増加に対して、残り約610mの推進の施工に対する検討や実施した対策について記述する。
(株)安藤ハザマ 大阪支店 東横堀西作業所 所長 中西 明彦
都市部の地下開発には土留め材や支持杭等を数多く使用し、周辺地盤の変形を防止するために、土中に残したまま数多く点在している。その存在を記した資料はほとんど無く、新たな計画によってトンネル施工を行うが、途中で障害となり工事が中断あるいは中止といったケースも多くあります。更なる地下トンネルの構築にはこれらは邪魔な存在であり、通常のトンネル掘削機ではこれらの障害物に対応することができません。
ミリングモール工法は、こういった地中に埋設されたままの障害物(木杭、コンクリート杭、PC杭、鋼矢板、H鋼等)を、安全に切削貫通し低コストで推進掘削を行う泥濃式推進工法です。このミリングモール工法掘進機の開発と、地中金属障害物を無事切削貫通し推進工事を完了した実績を紹介したいと思います。
ヤスダエンジニアリング(株) 設計部 設計課長 富田 昌晴
泥濃式推進工法の適用性への広がりは誰しもが認めるところでありますが、その背景は一連の工法システム、特に排泥ラインを一度機内で開放し、直視であれ、遠隔モニターであれ掘進地山を確認しつつ推進を継続する施工法で、掘進機は機械的な道具との認識であり、それらの操作の一部は施工者側の裁量を生かして、ある意味「刃口推進工法」における切羽の動きを肌で感じるような感覚を残した施工技術となっています。
そのため、現場の実情に合わせた対応性では優位な工法と考えられますが、余りにも地山への愛着が残され過ぎた結果、昨今の施工条件や土質条件の掘進では、それらの持ち味は「諸刃の剣」の危うさを感じさせる施工法とも考えられ、私達専門業者は密閉型推進の基本に立ち返り、切羽管理・精度管理・元押管理・安全管理など多くの課題を克服しながら工法の維持・発展に努めるべきであります。
本稿では、そのような「泥濃式推進工法における安全施工」について掘り下げて検討を行いたいと思います。
(株)アルファシビルエンジニアリング 代表取締役 工博・技術士(建設部門) 酒井 栄治