第41回「最新の推進工法施工技術講習会」
※本講習会は、土木学会「継続教育(CPD)プログラム」認定(CPD単位6.9)にて、2016年10月に開催されました。
シンプルであること。地中は複雑であり、画一的な条件下で推進施工を行えることは、ほぼ皆無といってよい。土質の変化、掘削深度による土圧・水圧の変化など、自然由来の掘削条件は多様となる。また道路占有に伴う平面線形、地下埋設物に伴う発進・到達条件など、現場固有の条件を加味すると、クリアすべき条件範囲は飛躍的に広がる。
施工ではその多種多様な現場条件から逃れることはできない。留まることのない複雑さに対抗する手立ては、単純さが重要な要素となる。つまり掘削性能、発進・到達性能、省スペース化されたプラント設備など、推進施工する上での元来的な基本性能が高いこと、またシンプルであることが解決の糸口になる。本稿では、ツーウェイ推進工法の考える泥濃式推進の基本性能の整理、また様々な条件に対してどのような解決を試みたか実際の現場を例として紹介する。
ツーウェイ推進工法協会 竹内 貴亮
アパッチ工法は、2000年の発足より泥濃式推進工法の特徴である長距離推進、曲線推進の施工はもとより、既設人孔および 既設シールド管渠への到達推進、小型立坑からの発進推進、急曲線推進、超長距離推進、またそれらの複合推進等を数々行ってきた。
この度は、当工法の概要および特徴を改めてまとめるとともに他工法と比較した際の優位性とは何であるかを説明する。近年では他工法との差別化を図るために到達立坑へ掘進機を誘導する電磁誘導技術、急曲線でも使用可能な特殊中押管、可燃ガス対策を目的としたシール材等を開発し施工を行ってきた。それらの内容を施工実績と合わせて説明するとともに、当社か取り組んでいるアパッチ工法で克服できなかった点を改善した新たな推進工法である地中障害物対応型の泥濃式推進工方法に ついても説明を行う。
ヤスダエンジニアリンク(株) 工事部 設計係長 藤田 たくみ
ヤスダエンジニアリング(株) 技術開発部 係長 羽部 孝信
近年の管渠工事は、すでに普及が進んだ都市部の下水道再構築事業・新規水道管布設事業・雨水対策事業・既設管更生事業・農業用排水管施設事業、さらには電気・ガスの新設管、大規模工場の排水管、アンダーパス施工など、推進工事を要する事業は現在も市場に混在しており、都市部の発展や地域の人口増など街は様々な形態で変化し続けている。そうした中で、過去のような管渠工事では適用しきれない施工条件、すなわち周辺環境が増えつつあるのが現状である。
こうした管渠工事の設計・積算以外での多岐にわたる検討事案をクリアーにするために、ここに泥濃式推進エスエスモール工法が実施した数々の周辺環境に合わせた施工事例・新規開発・導入を進めてきた推進工事用設備などを紹介する。
超泥水加圧推進工法は、泥水式推進工法と土圧系推進工法の長所を融合して考案、開発された工法であります。その後、 本工法は泥濃式推進工法発足時の理論的・技術的な基本とされました。
25mmのオーバーカットと、切羽およびテールイドの安定を図るため、粘土・目詰材を使用した高濃度・高比重な泥水や固結性滑材を使用し、低推力・長距離曲線施工を実現しました。
当初、泥濃式推進工法は礫の取り込みや元押のみによる推進を基本としていましたが、近年では礫破砕・中押し装置の使用・既設構造物到達といった形に変化しています。
私は、主に設計や開発に携わって25年になります。今回、泥濃式推進工法の変遷・基本的設計手法・特殊な施工事例等について、報告いたします。
超泥水加圧推進協会 井上 雅文
ECO SPEED SHIELD 工法協会 技術・積算統括主任 檜皮 安弘
推進工法施工技術の発展にともない、輻輳する地下埋設物や都市形成の複雑化の中で管列構築路線も多様化(長距離・多曲線(複合曲線)・急曲線・大深度)が求められるほか、先受け工法(パイプルーフ工法)以外にも本体構造物として大深度・ 巨石・岩盤層条件での施工が求められるなど、その適用範囲が拡大してきている。一方で、検討段階においては数少ない情報からの施工計画立案が求められるほか、厳しい受注環境ならびに不明瞭な施工環境の中で、いかに安全かつ確実に精度良く管列を構築していくかに専門業者への重圧とともに力量が試されている時代と言っても過言ではない。
本稿では、「本工法」の特長ならびに特殊施工条件下における検討や施工事例を通して、施工管理内容および施工計画立案時の留意点について述べるとともに、本工法が推し進める安全施工に対する対策を紹介する。
(株)アルファシビルエンジニアリング 技術部部長 技術士(建設部門) 松元 文彦
(株)アルファシビルエンジニアリング 技術部統括課長 工博 森田 智
現在では中大口径推進工事の約6割のシェアまで到達した泥濃式推進工法は、1981年に最初の施工がされた「超泥水加圧推 進工法」に端を発する。筆者と泥濃式の出会いはそれから6年経過した1987年であったが、それまでに経験した刃口推進工法や開放型機械式セミシールド工法から得られた当時の常識を泥濃式は色々な意味で打ち破る新技術であった。
その後1990年代の中盤以降に幾つかの泥濃協会が発足し、競合を重ねながら1000m級の超長距離やR=10m級の急曲線などの 技術的課題を克服し、さらに多岐に亘る分野にも挑戦して他に類を見ない実績を積み重ねてきた事は周知の事実である。
この発達した泥濃式推進工法にもう克服すべき課題は残っていないのか。ここでは今一度基本に立ち返り、拙い私見ではあるが、現状の泥濃式推進工法の特徴を分析して得られた技術的課題を紹介する。
(株)鴻池組 土木事業本部 技術部 部長 技術士(建設部門) 林 茂郎