第42回「最新の推進工法施工技術講習会」
※本講習会は、土木学会「継続教育(CPD)プログラム」認定(CPD単位6.8)にて、2018年4月に開催されました。
推進工法は、飛躍的に進歩してきた。巨石地盤や岩盤推進では、普通推進で発破を行いながら施工していたのが十数年前と考えると、小口径でも巨石地盤や岩盤推進が可能となっていることは、岩盤・巨石の推進は一つの推進工法進歩の象徴である。 しかし、このような地盤では掘進機の故障や推進管の破損等のトラブルの発生が多いことも事実である。昨今は、様々な技術の試行錯誤から、その頻度は少なくなってはいるが、まだ大きな課題である。また、今後の公共事業に対する予算が縮小される中では、岩盤推進においてでも、より経済的な推進工法の提案が求められるであろう。いかに推進が早く施工でき、経済的に施工可能かが重要な要素となる。岩盤推進は、効率的な掘削ができなければ、掘進機の消耗も激しくなり、そのコストは膨大となる。また推進の進捗が悪化するとトラブルに見舞われることが多いのが推進である。
本稿では、掘削が可能になったとはいえ、いまだ解決すべき課題が多い巨石地盤や岩盤での掘削について、その課題と対応について、実際の現場での結果を交え記述する。
(株)イセキ開発工機 建機事業本部 副本部長 工博・技術士 佐藤 徹
平成28年3月時における下水道普及率は全国平均で78%に達し、推進技術は上下水道の他に電気・ガス・通信等のライフラインの敷設に多用されるようになりました。地下埋設物が錯綜する狭隘な都市部、山岳地帯や海底などの条件下で様々な土質、急曲線、小土被り、高深度高水圧、既設構造物への到達、および超長距離推進等に対する適応力が求められています。(公社)日本推進技術協会の長距離推進の定義は、施工能率の低下・坑内作業環境の悪化・避難行動制約等から「呼び径2,000以下については呼び径の500倍」とされています。しかし、1,000m超えの推進実績は大半が呼び径1,000~1,350mmによって施工されています。中口径の長距離推進に工事コスト、社会的コストを始めとする総合的なコスト削減が求められています。無人化による安全施工を目標とし、1999年に推進延長1,006m(φ1,100)を達成、以後4件(1,447.6m・φ1,000、1,240,9m・φ1,000、1,235,5m・φ1,000、 1,017m・φ1,350)の超長距離推進を無事故で施工してきた「CMT長距離推進システム」を紹介します。
CMT工法協会((株)推研) 木下 貴義
平成17年より施工が開始された超大口径推進は、日本での施工件数9件、海外での施工件数1件とまだまだ実績が少ないのが現状であります。
中大口径推進(φ800~3,000)と比較し、作業基地での推進管の組立やストックヤード等の問題点、実施工に関する推進力低減の管理等、改善点が多々あると思われます。
推進延長に関しても200mクラスが主流でありますが、国内での最長推進距離L=320mを超える中押工法を採用した【超大・長距離】の事例も出てくるものと考えられます。
今後の超大口径推進のさらなる発展を希望し、施工に携わった一部の施工事例を報告します。
機動建設工業(株) 土木本部 次長 矢萩 元彦
秋田市の主要市街地区では、雨水処理能力を3年確率から10年確率対応とするための整備事業が展開されている。本工事は、雨水管として呼び径φ1650mmの鉄筋コンクリート管を泥濃式推進工法で整備したものである。推進延長は、JR秋田駅西口前の道路拡幅予定地を発進基地として1スパン1,030mの超長距離となっている。発進用地として様々な制約を受けるなか、土砂圧送ポンプによる土砂輸送と掘削土砂直接処理を採用し、設備を地上の防音ハウス内に格納することで、騒音対策に十分配慮し、昼夜間作業として施工を行った。
本稿は、超長距離推進の計画と実施、および土砂圧送における適切な性状と土量管理方法を、施工データに基づいて検討し、ある程度の成果を得られたので報告するものである。
大豊建設(株) 東北支店 秋田長沼推進作業所 次長 生形 浩之
(株)福田組 土木部技術企画部 参与 石塚 千司
泥濃式推進工法は、1996年の(社)日本下水道管渠推進技術協会(当時)による設計積算要領の策定以降、めざましい発展 を遂げており、1,000mを越える超長距離推進や最小曲線半径10mの超急曲線施工など、輻輳する地下埋設物や都市形成の複雑 化に対応する管布設工法として多様化への道を進んだ。現在ではこの適用性の広さから、中大口径推進工法による管路構築工 法において50%以上のシェアを占めるに至った。一方で、成熟した都市環境や地方都市への移行により、求められる施工路線 (推進延長・曲線半径・土被りなど)・施工環境(小規模立坑・車上プラントなど)・推進土質(巨石・玉石、岩盤、複合地 盤など)は難条件が累積することで、メーカとしてあるいは専門業者として求められる課題が複雑化し、その対応に苦慮して いる。本稿では、その特長や技術対応について再検証し、実績や経験を通して、工法の適正な適応範囲について考察するとと もに、さらなる安全対策について紹介する。
(株)アルファシビルエンジニアリング 施工本部副本部長 技術士 松元 文彦
(株)アルファシビルエンジニアリング 技術部部長 工博 森田 智
掘進機後部のジャッキで推力を得ながら管路を構築するシールド工法に対して、発進立坑の元押しジャッキで管列全体を動 かしながら管路を築造する推進工法では、曲線施工の課題点に大きな違いがある。
推進工法では全ての管が動くため、推進距離、曲線半径・交角、曲線の位置、土質(地盤反力)により、施工可否のポイントが 各々に存在する。曲線能力においても、管呼び径と掘進機性能、推進管長によって制限されるため、無限とはならない。
本稿では推進施工条件の多様なケースを想定・設定し、ツーウェイ推進工法推力計算で途中推力、最終推力などから各種値の推移を抽出し、その結果から曲線施工の限界点が何によってコントロールされるかを見出す。また最新の急曲線施工を紹介する。
ツーウェイ推進工法協会(進和技術(株)) 竹内 貴亮