第44回「最新の推進工法施工技術講習会」

“特殊条件下の推進工法”
計画と技術対応への展開

※本講習会は、土木学会「継続教育(CPD)プログラム」認定(CPD単位6.8)にて、2019年10月に開催されました。

推進・シールド併用工法の実績と超長距離における排泥システム

 ECO SPEED SHIELD (ESS)工法は、2009年の発足以来、泥濃式工法の特長を活かした推進・シールド併用工法に取り組んできました。1,000mを超える長距離施工、R=10m級の急曲線施工、既設構造物への直接到達(既設人孔・既設シールド)、急激な土質変化(断層)、無水層などの実績を挙げることができました。そして、泥濃式工法では最長となる2,447mの施工について、第63回「シールド・トンネル工法施工技術講習会(日本プロジェクト・リサーチ)」で、報告されました。今回は、この工事の基盤となった大阪府下の施工事例を紹介します。
 近年、推進工法のみで1,000mを超える実績が挙げられていますが、泥濃式工法では、排泥システム(真空吸引)が弱点とされてきました。今回、2,447mの施工を通じて、真空吸引のメリット・デメリットを紹介します。
 本稿では、さらなる長距離化に向けて、大阪府下での長距離・多曲線(R=15mを含む14カーブ)施工への取り組みを振り返り、泥濃式工法の最も重要な排泥システムの役割について、報告します。

ECO SPEED SHIELD 工法協会 技術・積算統括主任  檜皮 安弘

超大口径φ3.5m泥土圧推進工法による長距離施工
-超大口径推進による国内最長445.5m-

 超大口径推進工法は、推進管を2 分割で現場に搬入し、組立てることによりφ3,000mm以上の施工を可能とする工法である。平成17 年より国内では本工事も含め、10 件の施工実績がある。
 本工事は、宮城県石巻市の浸水対策事業の一環として建設中の石巻港排水ポンプ場から雨水を石巻港へ放流するための放流渠(L=445.5m)を超大口径推進工法(φ3,500mm)にて築造するものである。
 本工事の国内最長距離となる推進距離445.5m を施工するにあたり、①推進管の組立に関する品質管理、②推進管のバッキング対策、③総推力の上昇抑制対策等を検討し、施工を無事に完了した。
 本稿では、超大口径推進工法にて長距離推進を施工する上で検討した項目および施工実績について報告する。

佐藤工業(株) 東北支店 石巻作業所 所長  坂口 太郎

トラブル事例から学ぶ推進工法の基礎と鉄則
~トラブル経験も重要な「ノウハウ」~

 書籍や講習会などで発表される施工事例の多くは成功体験であり、自社技術の優位性が主となることも、また、やむおえないかと思われます。しかし、その礎を築いてきたのは失敗を繰り返して行き着いた経験であり現場で頑張る職員たちである。
今回、このトラブル経験を貴重な「ノウハウ」として学んでいきたいと考えた。
 一般的な施工歩掛は公的な書籍により示されているが、あくまで全国平均値であり局所的な地域特性などが考慮されていない。しかし、この部分の判断が成否に関わることが多く、自然(地山)を相手にする土木ならではの難しさがある。
 トラブル事例を学ぶことは基本を再考することでもあり、「若手職員の育成」からも重要と考え、本来であれば秘匿としたいトラブル事例と対処の記録を紹介する。

ツーウェイ推進工法協会  藤井 昭彦

推進工法における発進・到達時のトラブル回避に向けての地盤改良計画と施工

 推進工事における発進および到達部の鏡切り作業は、一時的に地山を開放するため、地下水や土砂の流出が起こりうる非常に危険な作業であるが、地下で行う推進工事においては決して避けることができないのが現状である。その作業における危険度を低減し、安全に行うことを目的として“地盤改良工法”が対策工法として用いられている。
 地盤改良工法には様々な工法があり、それぞれの工事、それぞれの地盤に対して最も適した工法を選択する必要がある。また、改良効果を確実に得られるよう、適切な施工計画をたて実施することが重要である。
 本稿では、地盤改良工法を行うにあたり、どのような計画をたて、どういった点に注意して実施するべきかについて述べる。

日特建設(株) 技術本部 技術開発第二部  佐藤  潤

極小土被りにおける密閉型推進工法の適用と施工事例

 昨今、密閉型推進工法は適用の幅を広げ、硬質地盤や大深度および小土被り施工など顧客の要求事項に応じた施工事例が多数見受けられる。その中で特に都心部においては、地下インフラ設備が輻輳化していることから極端に深い位置(大深度)や浅い位置(小土被り)での非開削技術を使用した埋設工法が中心となってきた。
 そこで本稿では、小土被り施工に着目し、浅層地盤の特性を踏まえた切羽の安定方法や対策工ならびに、小土被り施工時に見られる特有の無水層地盤と周辺摩擦力の関係や地表面への影響、その他障害物への対応および支圧側の地盤反力の補強等について、施工事例を紹介する。

(株)アルファシビルエンジニアリング 施工副本部長 技術士  松元 文彦
(株)アルファシビルエンジニアリング 技術部長 工 博  森田  智

新しい領域に挑戦するミリングモール工法
-鋼製支障物切削機能を生かした新しい取り組み-

 2012年に公開したミリングモール工法は、7年間の間に約50件の施工実績を記録するに至った。鋼矢板・H杭・PC杭など様々な残置支障物を切削して到達してきたが、この鋼製支障物切削能力を生かして、現在は既設構造物への直接到達に挑戦している。品川区の浜川雨水幹線は、鋼製の支障物以外に既設人孔の鉄筋コンクリート壁を直接切削して到達させている。
 名古屋市の中村雨水幹線では地上からの地盤改良無しに鋼製セグメントの既設シールドを直接切削し、T字接合させている。比較事例として、そのすぐ隣でアパッチ工法によるシールドT字接合も紹介する。また、当社忠岡の機材センターにて切削実験等を行っている。今回は、これら3現場の施工と実験の一部の結果について報告するものである。

ヤスダエンジニアリング(株) 関東支店  角田 健一
ヤスダエンジニアリング(株) 大阪本店  岡田 昌彦
ヤスダエンジニアリング(株) 設計部  ヤン ヒョンミン

大土被りでの河川横断を泥水式推進工法により施工
-大土被り、高水圧下(0.30Mpa) なおかつ長距離推進810m-

 本工事は、ミャンマー連邦共和国ヤンゴン市において、水道管(呼び径700NS形ダクタイル鋳鉄管)敷設のために、バゴー川横断部のさや管として呼び径1100の推進管をアルティミット泥水式推進工法にて埋設するものである。対象土質は、シルト質砂層から到達手前約100mでシルト粘土層に変化する互層地盤であり、N値はシルト質砂層が最大34、シルト粘土層が8とされる。推進延長は約815mと長距離であり、土被りは発進側と到達側ともに約31.6m、河川横断部の河床との最小離隔は約5.0mとされ、想定最大自然水圧は0.30MPaと想定された。
 本稿では、大土被りおよび高水圧下での長距離推進工事の課題をふまえて、本工事の施工条件に対する課題と対策とともに、その施工結果について報告する。

機動建設工業(株) 土木本部技術課 課長  須藤  洋
機動建設工業(株) 国際事業部工事課 課長補佐  岡嶋 章好