第45回「最新の推進工法施工技術講習会」

厳しい施工環境の克服に向けて
推進工法技術 “更なる前へ”

※本講習会は、土木学会「継続教育(CPD)プログラム」認定(CPD単位6.7)にて、2022年10月に開催されました。

大深度・長距離の小口径トンネルの施工(淡山連絡水路)
管径φ1,000mm 推進延長L = 1,600m(2スパン)

 本工事は、国営東播用水二期農業水利計画に基づき、用水路系統の再編を目的として、延長約1.6km(2スパン)に及ぶ管水路(内径φ1,000mm)の新設である。本工事と同様な内径1,000mmで推進延長が1,000mmを超える工事実績は稀有である。主な地質はN値30~150の密実に締まった礫質土であり、丘陵地の路線中間部に両発進立坑を設けて両側に長距離推進(L=935m、693m)を行う工事である。
 本稿では、大深度な硬質地盤での小口径トンネルを複合推進工法により施工を行った。大深度かつ長距離推進における小口径トンネルの実施工上の課題となった①長距離による抵抗力増加に伴う掘進不能の防止、②掘進時の精度確保、③硬質地盤への対応およびその対策とφ7.5m、深さ40mと狭小かつ大深度立坑における安全性向上を図った工夫や効率化施工の事例について報告する。

(株)鴻池組鴻池組 土木技術部 部長(技術士)  福嶋  渉
(株)鴻池組 土木技術部  本間 清真

横坑を設けずシールド坑内から発進する推進工法
市街地における浸水対策工事より

 近年、全国各地でゲリラ豪雨と呼ばれる局地的な大雨による浸水被害が発生し、その浸水対策におけるインフラ整備に推進工法が広く用いられている。しかし、とりわけ都市部においては、すでに上下水道・工業用水・電力・通信・ガスなど多くのインフラが整備されており、浸水対策のための工事用地確保が困難となっている。
 本稿では、名古屋駅周辺の市街地にて施工した浸水対策工事で、施工環境や地下埋設物等の施工条件から発進基地および立坑を設けることができないため、約300m離れたシールド発進基地および坑内に推進工法用発進設備をけ、横坑を設けることなくシールド坑内から発進し、推進工法によりシールド坑内への流入管を敷設した工事を紹介する。

機動建設工業(株)名古屋支店 支店長  永田  知

難条件下(長距離・急曲線・複合地盤)を克服した泥濃式推進工法(超流バランス式)による施工事例

 泥濃式推進工法の適用範囲は拡充度合いが顕著で、特に長距離・急曲線施工実績は増加の一途をたどっている。加えて都市部での施工は地上用地や立坑制約などから、路線条件の厳しさが増しており、地盤条件においても岩盤を含む複合地盤への掘進機側の対応を含めた対策には慎重さが求められている。
 このような背景から、本報告では、このような厳しい施工環境下で実施した2つの好事例を紹介し、施工計画検討時の課題の抽出や対策工および実施した内容などを踏まえたそれらの効果や今後の課題等について述べる。
 熊本 配水管推進工事:φ800mm、L=628.56m、R=150m+80m+100m 、転石~粘性~砂礫
 広島 下水道築造工事:φ1350mm、L=419.13m、R=35m+50m+50m+15m+100m、砂岩~巨石~礫

(株)アルファシビルエンジニアリング 施工副本部長(技術士)  松元 文彦

都市部で露呈する推進施工条件に対処した掘進機安全対策

 都市部における推進施工は、新しく、そして厳しい施工条件が日々累積される現状である。また今までは検討すらできなかった条件に、いよいよ立ち向かうことが要求される場面も多くなってきている。
 地下埋設物が錯綜する都市部では、シールド工法で敷設された幹線はそれを避けるように土被り20mを超える大深度であることがほとんどである。しかしその幹線に繋ぐ管路の施工方法は未だに試行錯誤が続いている。管列全体を到達に至るまで動かし続ける推進工法では、高水圧下での施工は少しのミスも許されない。一つ一つの場面に細心のマネジメントが要求される。
 本稿では各工事の各課題に対して、特に掘進機の機能でどのように高い安全性を確保して対処したのかを主にピックアップし報告する。

ツーウェイ推進工法協会  竹内 貴亮

シールド坑内発進~ 大土被り、長距離、R=10mのS字曲線施工

 セグメントへの取付け管は、シールド径が小さい場合、直接到達が可能な既設到達型が採用されている。また、シールド径が大きい場合、到達した掘進機はシールド坑内を搬送し、発進立坑で回収されている。本工事では、発進ヤードの確保が困難であり、さらに発進直後にR=10mのS字曲線となることから、シールド坑内発進となった。仕上り内径φ2,500mm(施工時φ2,800mm)において、発進立坑より875.40mの位置で、呼び径φ800mmの推進工事を行った。
 本稿では、課題とされる①掘進機・推進管の運搬、②φ2,800mm内での作業、③20mを超える大土被り、④硬質砂礫層における約500mの長距離施工、⑤R=10mのS字曲線に対する対策とその結果を報告する。
 併せて、設計と実施の土質データが乖離した場合に、推進工法では大きな影響を及ぼす粒度試験や排泥の比重測定について、改めて、検証したので報告する。

ECO SPEED SHIELD工法協会 技術・積算統括主任  檜皮 安弘

超急曲線R = 8 . 5 mに使用した推進管の選定方法

 横浜市中区の本牧緑ヶ丘地区は、窪地となっている箇所に雨水が集中するため、浸水対策として増強幹線へ接続する管路の布設が計画されていた。
 しかし、現地は公道が狭く住宅が密集しており、重機が入れないことから、道路の線形に合わせて、推進工法による管路の布設が採用された。
 線形(推進延長L≒66m、呼び径φ800mm)には曲線が4カ所含まれており、そのうちの2カ所が、R=8.5 mとR=10.0mの超急曲線のため、使用する推進管にも高い性能が要求された。 本稿では、このような超急曲線施工で使用する推進管について、検討に必要な項目と方法について報告する。

(株)クリコン 技術営業部 部   平尾 慎也